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現在非居住者の中国人が、日本において居住者であったころに購入した不動産を売却する場合について

会社設立登記において、印鑑証明書の氏名が英字(ピンイン)表記になっている場合)←前

平成30年夏頃、現在は在留資格を失い中国に帰国しているが、かつて日本で中長期以上の在留資格を持ち(=日本で住民登録がなされていた)、大阪市内の不動産を購入されていた方が、その不動産を売却したいとするご依頼を頂きました。

今回は、この件について、振り返りたいと思います。
(自身の復習の意味も兼ねております。)

この件で重要だと思う論点は、4点ありました。
①非居住者又は外国法人の不動産の売却代金に対する買主の源泉徴収義務について
②かつて日本で住民登録がなされていたが、現在はなくなった場合の住所変更登記について
③売主が海外在住の外国人であるが権利証を提供できない場合について
④中国の公証処発行の公証書の日本語訳(特に住所)について

 

 

①非居住者又は外国法人の不動産の売却代金に対する買主の源泉徴収義務について
そもそも、所得税法・復興特別所得税法上、日本の不動産取引の売主が非居住者(=中長期以上の在留資格なし)である場合、原則として、買主には、買主が支払う売買代金の10.21%について源泉徴収義務があります。
具体的には、支払った月の翌月の10日までの所轄税務署に納める必要があります。なお、支払が手付と残代金のように2度に分かれてなされる場合は、それぞれ支払った月の翌月の10日までに納めねばなりません。
なお、買主には源泉徴収義務がありますから、仮に売買代金の全額を売主に支払ってしまった場合でも、売買代金の10.21%を税務署から納めることを求められます。
そして、非居住者又は外国法人である売主は後に確定申告をし、譲渡所得がない場合や売買代金の10.21%よりも少ない場合には、その額を還付してもらえます。
また、確定申告の結果、日本に所得税をいくらか納めたこととなった場合には、外国税控除として、本国で使うことができるようです。

まさに、今回は、非居住者である方について、日本の不動産を売却するという話ですから、この買主に対する売買代金10.21%の源泉徴収義務があるのか否か検討しなければなりません。
もし、源泉徴収義務が買主にあるならば、そのことを売主・買主双方(及び仲介業者)に説明し理解を得なければなりません。
また、売買契約の所有権移転時期特約についても要検討になると思います。

 

実は、この買主の源泉徴収義務は、非居住者が日本の不動産を売却する場合ならば、常にあるのではなく、例外があります。

例外①買主も非居住者 かつ 海外で取引(海外払い)をした場合

例外②買主が居住者ならば、売買代金が1億円以下 かつ 買主または親族の居住用

のいずれかの要件を満たす場合がそれです。
(なお、売買代金が1億円以下というのは、固都税の精算金も含めた額です。法的性質は、売買代金の一部のため)

 

そして、今回の取引の買主は、居住者で、売買代金も1億円以下であり、買主及び家族の居住目的で購入するものでした。
よって、買主には源泉徴収義務がないことになります。
(但し、売主には、申告義務があります。)

 

※税務についての話は、書籍の情報に加え、顧問の税理士の先生に事前に相談し調べて頂いております。
※司法書士は税務について、本来門外漢ですし、どこまで関与すべきか悩ましいところですが、制度の説明程度はできた方が良いかと考えています。司法書士なら誰でもできる誰でもやることをしていては、若手が成りあがることはできないと考えます。その意味でも、ブルーオーシャンかつ成長が見込まれるこの分野での専門性をつけ、差別化を図ることは大変意義のあることと思います。
あと、そもそも、所得があれば、日本に納税してもらうのは当たり前ですし。

 

②かつて日本で住民登録がなされていたが、現在はなくなった場合の住所変更登記について
この件の売主は、かつて日本で住民登録がなされており、その時期に大阪市内の不動産を購入されているため、登記上の住所は日本の住所です。しかし、現在は、在留資格が切れており(=日本の住所は現在なし)、中国に帰国しています。
すると、当然、売買による所有権移転登記の前提として、住所変更登記をせねばなりませんが、住所の沿革を各種証明書で完全につけることはできず、上申書で対応することになるはずです。
具体的には、住民票除票により、日本での最後の住所=登記申請前の登記上の住所は、証明できました。
また、現在の住所も公証書(宣誓供述書)で証明できます。
しかし、当然、日本の住民票除票には、「年月日中華人民共和国(〇〇省)〇〇市・・・に住所移転」などとは記載されていませんから、その部分の繋がりを証明できないのです。
ですから、上申書で対応するわけです。

さらに、住所移転の原因日付をいつにするのかも少し悩みました。個人的には、在留期間満了日の翌日かなと考えていましたが、法務局によれば、実際に帰国した日付とのことでした。
理由は、在留期間が経過しても日本にいる場合があるためとのことです。
そして、その日付は上申書の中に記載し、明らかにすればよいとのことでした。

 

③売主が海外在住の外国人であるが権利証を提供できない場合について
売主(及び包括代理人)に事前に必要書類を案内した段階では、登記識別情報通知はあるとの話でしたが、実際に包括代理人にお会いして、確認してみると、登記識別情報通知はなく(謄本を持参)、公証書も3か月以内発行のものではありませんでした。
(※売主本人の本人確認はテレビ電話にて行いました。)
(※公証書は、署名証明ではなく、印鑑・印影についてのものでした。ですから、3か月以内のものが必要です。)
直ぐに、公証書は再作成してもらうことになりましたが、紛失(失念)した権利証について、どうしようかと迷いました。

仮に、本人確認情報を作成するとなれば、必ず売主本人と面談しなければなりません。
そして、売主本人は事情により来日することが出来ないとのことでした。
(※その事情はやむを得ないものでした。)
また、売主包括代理人が飛行機やホテルの手配も売主負担でできるとのことでしたので、少し考えた私は腹をくくり、上海に乗り込んでやろうと決めました。
(※売主の住所は、上海ではありません。単に落ち合う場所です。)

早速、大阪のパスポートセンターに、パスポート発行に掛かる時間や必要書類等について、問い合わせ、そのつもりで準備を進めていました。

ところがです。
冷静によく考えてみると、現在中長期以上の在留資格のないこの売主には、不動産登記規則72条2項のいう1号書類も2号書類もありません。
旅券はあるにはありますが(売主本人確認時、居民身分証と共に提示、データも頂いた)、当然、日本国政府発行のものではありません。
念のため、法務局にも確認しましたが、やはり、1号書類には当たらないとの回答でした。
ですから、私が中国に行っても全く意味がなく、結局、事前通知制度を活用する他ないという結論に至りました。
(※中国の公証処の公証員に本人確認・認証してもらった書類を添付することも一瞬考えましたが、まず日本の不動産登記制度を理解してもらうことすら困難と思い諦めました。)

かくして、海外への事前通知制度を活用するという初めて経験をすることになりました。
ここで、海外への事前通知について、日本国内での事前通知の場合と異なること等を確認します。
・まず、通知発送の日から2週間以内ではなく、4週間以内であること
・国内で売主が個人であれば、本人限定受取郵便で発送されますが、海外ですから書留で発送されること
・さらに、海外の外国人に発送する場合でも、訳文などはつかないということ
が挙げられます。

ですから、今回は、売主本人に、
①公証書記載の住所(住所変更後の登記上の住所)に日本の大阪法務局から、事前通知という書類が送付される
②受け取ったら、書類の下部に署名及び公証書の印鑑(公証処で捺印したもの)を押す
③日本の大阪法務局に返送する(ここは、司法書士あてに郵送してもらってもいいとは思いますが。)
をしっかり理解してもらう必要がありました。

 

余談ですが・・・
今回の件で、私は法務局と何度か事前の相談をしていましたが、その際、法務局の方が、売主の権利証がないなどの事実から、日本人でない方は少しルーズ或いは文化が違うというようなニュアンスの発言がありました。
確かに、権利証の紛失ばかりでなく、外国人または外国人が代表取締役の日本法人所有の不動産の取引において、固都税等の滞納が原因で差押が何本も入った不動産の登記申請はたまりあります。
しかし、それらについて司法書士等にも責任の一端はあるのではないかと思います。
例えば、不動産の購入時、買主の日本語能力によっては、発行された権利証や権利証の注意書きについて、せめて英訳(買主の母国語がベストかもしれませんが)ぐらいは付けて返すことや非居住者が買主ならば納税管理人について説明する等するならば、少し変わるのではないかと思いました。

 

④中国の公証処発行の公証書の日本語訳(特に住所)について
本件では、添付書面として、印鑑・印影についての公証書を添付しました。
これは、1件目の所有権登記名義人住所変更登記の登記原因証明情報であり、かつ上申書に押印した印鑑についての印鑑証明書に相当します。また、2件目の所有権移転登記の委任状に押印した売主意思確認としての印鑑証明情報でもありました。
そして、当然、中国の公証処で発行されたものですから中国語で作成されていますが、日本語の翻訳文もつけてくれます。

問題は、この訳文です。

そもそも、中国(及び台湾)の住所氏名の漢字は、法務局の取り扱い上、原則そのまま登記する。しかし、その漢字が日本の漢字でなければ、その簡体字を日本の漢字に置き換えるというものです。

ここで大事なのは、日本の漢字にない場合だけ、置き換えるということです。

ということは、例えば、当事者の住所が公証書の原本(中国語)では、「・・・〇〇道○○里3号楼2単元202号」となっていて、公証処作成の日本語訳では、「・・・〇〇道○○里3号棟2門202号」となっているとき、盲目的にこの日本語訳の記載を申請書等に記載することはできないことになります。
なぜなら、あくまで、「楼」も「単元」も日本の漢字として使えるからです。
もちろん、意味を考えれば、中国語の「3号楼」は日本語の「3号棟」の意味であり、「2単元」は「2門」の意味なのだと思います。

これに気づかないと、補正がとても面倒です。

 

ちなみに余談ですが、日本の公証役場で、原始定款に記載する発起人住所について、公証書の訳文通り作成しても、全く問題になりません。
が、設立登記申請の際には、上記の通り指摘される事があります。
ですから定款作成時から、公証役場に法務局の取り扱いを説明し、登記申請と一致する形で定款を作成する必要があります。

※法務局や公証役場によって、取り扱いが異なることがあります。

 

何はともあれ、無事、登記識別情報通知がレターパックにて、法務局より送付されてきました。

色々、勉強になった案件でした。

 

次→( )

 

 

会社設立登記において、印鑑証明書の氏名が英字(ピンイン)表記になっている場合

遺言の作成を強く勧める場合:第4回 元外国人の方の相続)←前

平成30年春頃、外国籍の方(中長期在留資格あり)を発起人兼代表取締役とする株式会社設立登記の依頼を受けました。

株式会社設立登記には、当然、原始定款の認証時及び設立登記申請時に、印鑑証明書(中長期以上の在留資格がなければ宣誓供述書(中国本土の場合は公証書という))が必要です。
この方は、前述の通り中長期以上の在留資格を有しているので、本邦で住民登録ができ、印鑑を登録すれば、印鑑証明書が発行されます。

ここまでは、昨今、特に大阪市内の中心部ではよくあることですが、お預かりした印鑑証明書を確認してみると、氏名が日本語ではなく、英字(ピンイン)で記載されていました(なお、通称の表記なし)。
そうすると、定款・各種設立登記添付書面の発起人氏名の記載や役員氏名の記載ひいては登記簿の役員氏名の記載をどうするのかという問題が出てきます。

早速、依頼者に英字(ピンイン)とそれに対応する漢字が併記された公的書面(ここではパスポートの写し)を頂き、またどのように登記簿に役員を表記したいかについて希望を伺いました。
依頼者の希望としては、漢字表記(もちろん必要に応じて日本語の漢字に引き直す)でした。
英字(ピンイン)の読み方をカタカナ表記で登記する余地もあるかと思ったため確認しました。

これを受け、定款及びその他設立添付書面につき、漢字表記にカッコ書きで英字(ピンイン)を併記し、当該印鑑証明書及びパスポートの写しをもって、定款の作成及び登記申請(なお、あくまで申請書に記載するのは漢字表記のみ、よって、登記簿に記載されるのは漢字表記のみ)できないかという相談票を公証役場及び法務局に流しました。
結論的には、公証役場も法務局も、それで問題ないとの回答でしたから、その後の手続きをそのまま進め、無事登記手続きは完了しました。

 

ところで、当初私は、何故ここは日本であるにも関わらず、日本語ではない字で表記された印鑑証明書が発行されうるのか個人的に違和感がありました。そこで、当該印鑑証明書を発行した区役所の住民登録担当者に、その点を伺いました。
すると、まず入管で外国人の登録がなされ、それが住民基本台帳に反映され、その情報が住民票や印鑑証明書に記載されるとのことでした。そして、入管での登録時に英字(ピンイン)でのみ登録がなされると、やはりそれがそのまま住民票や印鑑証明書に記載されるそうです。
ですから、もし、どうしても住民票や印鑑証明書に漢字表記を載せるとなると、入管での手続きからやり直す必要があるようです。
(なお、もし市役所などで通称名が登録できればそれで問題をクリアできる可能性はあるやもしれません。)
その意味で、今回の設立登記時の対応(印鑑証明書+漢字・英字(ピンイン)が併記されたパスポートの写しを添付)は、ある程度確実かつ簡便で良かった思います。

ただ、気掛かりなのは、今回はあくまで商業登記の話である点です。
つまり、登記申請の際に、必要な住民票や印鑑証明書の氏名表記が英字のみであるという問題は、商業登記だけの問題ではなく、不動産登記においても同様の問題が起こりうると思います。
そして、商業登記と不動産登記とでは、後者の方がより審査が厳格なのではないかと思います。
実際、今回の件の相談票に対する回答のため電話で法務局担当者と会話した際も、英字(ピンイン)とその漢字表記が記載された公的書面の写しがあれば、参考につけてもよいとのニュアンスでした。それがあれば法務局も安心して登記できるとのことでした。言い換えれば、必ずしも必要ではなく、発起人の決議書などで、役員が選任・選定されその記載として、漢字表記があれば、それを信頼して登記するとの回答だったのです。同音異字の可能性があるにも関わらずです。
仮に、不動産の買主が、中長期以上の在留者資格をお持ちで、日本で住民票が発行されるがその氏名の表記は英字(ピンイン)のみで通称もなく、登記簿に記載する買主の氏名表記を漢字で行いたいとすると、果たして、当該住民票及びパスポート等の写しだけで通るのでしょうか。
時間的余裕があれば、入管での手続きからやり直してもらうべきなのでしょうか。
ではもし、決済直前に依頼が来たらどうすのか。追完で対応か。

中国人の不動産業者様には、せめて決済の2週間前には、連絡を頂くよう伝えておくことが、結局最善かもしれません。
おそらく、不勉強な私が想像もしない問題点が他にもあるやもしれませんから笑。

 

このような事案について、大阪本町にて相談を希望される方(夜間相談や出張相談もOK)は、お気軽にメール・電話でお問い合わせくださいませ。

 

※注意:全ての公証役場及び法務局で同様の取り扱いがなされるかは分かりません。

追記:住民票については、氏名表記(英字)の場合において、カタカナでその読み方を備考として記載してもらうことが可能だそうです。そして、その備考欄のカタカナをもって登記できるようです。

※法務局に事前確認する方がいいでしょう。

 

次→(現在非居住者の中国人が、日本において居住者であったころに購入した不動産を売却する場合について

渉外取引②(非居住者による不動産取引(購入)に係る外為法上の届出と納税管理人の申告について)

渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)←前

平成29年7月頃、大阪市内のマンションについて、非居住外国人(中長期以上の在留資格なし)を買主とする不動産取引に係る登記案件を受任しました。
買主の方は、本邦に住民登録はなく従って住民票は用意できません。
そのため、これに代わる書面として、買主の方の本国の管轄公証役場で宣誓供述書を作成してきてもらい、住所証明情報とすることになりました。

また、購入の目的は投資用またはセカンドハウス用(いずれか本人も決めかねている)であり、とにかく居住用ではありませんでした。

取引自体は、買主様が日本語がある程度理解できる方であることもあって、特に問題なく決済後登記申請まで至りました。

 

さて、非居住外国人が非居住用で日本の不動産を購入した場合には、その後どのような手続きが一般的な場合に比べて必要なのでしょうか。
(権利証やその注意書きの英訳、将来の売却時に代金の源泉徴収(所得税法161Ⅰ⑤、212Ⅰ、213Ⅰ②、復興財源確保法28Ⅰ)とか、保有したまま死亡した場合の渉外相続(中華人民共和国の場合:【日本法】法の適用に関する通則法36、41及び【中国法】渉外民事関係法律適用法31但書 ∴根拠法は日本法)とかは別にして)

以前にも触れましたが、①外為法上の届出(資本取引)と②納税管理人の申告です。

①については、一部例外(外為報告省令5条2項10号)を除き、取引から20日以内に日銀経由財務大臣あてに事後報告をしなければなりません。
(同じく会社設立時も事前届出・事後報告が必要なことがある点注意)

②については、非居住者が所有する不動産に課税される各種税金につき、それぞれ納税管理人申告書の提出が必要なようです。
即ち、(大阪市内の物件ですと)

a不動産取得税ならば府税ですから府税事務所、

b固都税ならば市税ですから市税事務所そして、

c個人で賃貸収益を得れば所得税(法人なら法人税)が課され国税なので税務署に申告書を提出します。

※大阪の場合、abは物件所在地がどこかに応じて管轄税事務所が細かく決まっているので注意
※cは納税管理人を選任した納税者本人の納税地(国税通則法117条2項の「納税管理人に係る国税の納税地」の意義)(所得税法15条、同法施行令54条)
(具体的内容は割愛!!「日本加除出版 渉外不動産取引に関する法律と税金 196頁以下参照」)
cについては、完全に税理士先生の範疇と思いますので素直にお力添えいただくのが正しいと思います。賃貸収入があるなら確定申告も必要かと思いますし。

 

というわけで、登記完了後速やかに、業者様と役割分担しながら必要な手続きをしました。

※①について外為法上の届出(資本取引)

 

そろそろ、上記の本の紹介をしたいのですが、まだ読み切った感がないので、やめておきます。
それぐらい濃い本です。

 

さて、次回は、遺産分割協議(協議後書面化前に2次相続発生)、氏の変更または商業登記に関する小ネタについて書きたいと思います。

次→①定款PDFファイルの名前について、②印鑑証明書と在留期間について、③解散登記から10年による閉鎖(商業登記規則81条第1項による登記記録閉鎖)からの復活について

渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)

(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について)←前

平成29年5月中旬、買主を外国人個人(非居住者:中長期以上の在留者でない)とする不動産取引(土地・建物:一戸建て)に係る登記案件を受任しました。

内容的には、抹消→移転 のみ(現金決済)でした。

もちろん、非居住者ですので、本邦の市区町村に住民登録はありません。

そこで、本国で宣誓供述書を作成してもらい、翻訳文をつける必要がありますが、この方の場合は、宣誓供述書の後半の頁で日本語訳がついていました。
※本国に住民登録制度があり、住所証明情報として適格性があればそれに翻訳文をつける方法でもいいとは思いますが、この方の国にはありません。

また、早い段階で、この宣誓供述書の写しを確認できたので、ここまでは特に問題はなにもありませんでした。

 

次に、外為法上の届出(資本取引)が必要か、また納税管理人が必要か、どうか知りたかったので、多分必要だろうと思いつつ、購入目的を業者に聞いたところ、買主は日本に移住し、会社を創業する予定であり、そのために購入するとのことでした。

ということは、ご自身の居住用ですから、外為法上の届出も、納税管理人も不要になるはずです。
※外為法上の届出:外為報告省令5条2項10号イ、納税管理人:国税通則法117条1項参照

 

しかし、今度は、住宅用家屋証明による減税の適否 及び 適用されるとして具体的に何が添付書類として必要か が問題になります。

租税特別措置法には、国籍要件はないので、日本人でないことのみで適用されないことはないはずですが(実際、永住者の方で住宅ローンを組んで減税適用ありの決済もたまにありますし)、非居住者であっても、自己の居住用に不動産を購入するならば、適用されるのでしょうか。

少し調べましたが、本当に居住用で不動産を購入するのであれば、適用されるようでした(日本加除出版 渉外不動産取引に関する法律と税金 170頁)。

では、市税事務所への添付書面として具体的に何が、一般的な場合に加えて必要なのでしょうか。

管轄の市税事務所と何度か電話でやり取りしたところ、本当に今回の購入目的が居住用であることが確からしいことの分かる書面が必要とのことでした。
(つまり単なる日本での別荘・セカンドハウスではないことが分かるもの)

ということで、申請書及び証明書と共に、以下の書面を添付することにしました。

・申立書
・登記情報(照会番号付き)
・登記原因証明情報
・宣誓供述書:住民票の代わり
・同居親族からの申立書
行政書士先生の依頼確認書(在留資格認定証明書申請(在留資格:「経営・管理」)の依頼を受けていること及びその申請準備中であることにつき)

念のため、担当市税事務所に確認を求め、上記で過不足ないとの回答でしたので、決済当日を迎え、決済後何事もなくその市税事務所で減税証明書を取得し、法務局に向かい登記申請しました。

※あくまで一例であり、管轄の市税事務所・担当者或いは、取引当事者の状況により判断が変わることがあり得ます。

 

 

この登記手続きで感じたことは、常に固定概念?を疑った方がいいなということです。

私は、なぜか、非居住者の外国人が買主になる場合には、減税の適用がないものとばかり思い込んでいた節がありました。

「もしかしたら、減税の適用があるのでは?」と思ったのは、その少し前に、同じ国の方(永住資格あり)が買主となる減税の適用のある登記手続きを実際にやっていたためです。

よい教訓になりました。

 

次回は、渉外取引②か、遺産分割協議について、書きたいと思います。

→次(渉外取引②非居者による不動産取引(購入)に係る外為法上の届出と納税管理人の申告について

四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について

前(親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策)

平成29年4月下旬頃、大阪市内の不動産(マンション一室)の売却に係る登記案件を受任しました。

この取引は、いわゆる三ため契約(第三者のためにする特約)により、甲から丁(売買契約は、甲乙間、乙丙間、丙丁間の3つ必要です)に直接所有権を移転(登記の動きも同様)したいとするものでした。

問題は、三者間新中間省略登記の場合は、売買契約の特約及び登記原因証明情報などの書式が広く出回っているのですが、これが四者間新中間省略登記となると、なかなかそれらの書式が見当たらないことでした(もっとも、基本的には、三者間と同じなのですが)。

そこで、三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における特約及び登記原因証明情報等をベースにして、四者間新中間省略登記バージョンを作成し、管轄法務局に対する事前の相談票による確認をし、それをもって、実際の登記手続き等を進めることにしました。

 

ではまず、ベースになる三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における契約書に加える特約及び登記原因証明情報等について確認します。

【前提】

・売買契約書自体は、第一の契約:甲乙間、第二の契約:乙丙間の2つ必要です。

(買主の地位譲渡なら1つです。但し、買主の地位が移るので、丙に売買代金が知れることになります。また、地位譲渡の対価は不動産所有権ではなく、包括的な意味での買主の地位ですので、対価全体(土地・建物の区別なく)について消費税が課される可能性があります。)

・第一の契約の買主である乙が自ら所有権を取得せず、第三者(=丙)を指定して、この第三者が受益の意思表示

をし、甲から直接丙に所有権を移します。繰り返しますが、所有権は、甲から一時的にでも乙には移らず、直接丙

に移転します。よって、所有権移転登記の当事者も権利者:丙、義務者:甲となります。

・効果として、乙につき、不動産取得税や登録免許税などの不動産流通税が課されません(乙は一時的にでも所有権を取得していないから)。

⇔決して、中間省略登記が再びできるようになったわけではないです(判決による登記(不動産登記法63条)など一部を除き)。

新中間省略登記と呼ばれることが多いのは、効果がかっての中間省略登記と同じで、理解されやすいためだと思います。

【特約】

第一の契約:甲乙間

①第三者のためにする契約

②所有権留保

③受益の意思表示の受領委託

④買主の移転債務の履行の引受け

第二の特約:乙丙間

①第三者弁済

〈具体的文言〉

新中間省略登記(三者間の場合特約) ※Wordです。

 

【登記原因証明情報】

登記原因証明情報(所有権移転、新中間省略登記(三者間型)) ※Wordです。

※甲、乙、丙の連名にするか、それぞれ作成するかは、別にして、甲だけでなくそれぞれの記名押印をもらう方が無難と思います(登記研究708号141頁以下参照:真正担保のため及び乙は登記義務者に準ずるから)。

 

【その他書面】

記名押印者とその他書面

甲:所有権直接移転証書、受益の意思表示受領委任状

乙:所有権移転先指定書

丙:所有権取得意思確認書

割愛!

 

以上が、三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における契約書に加える特約及び登記原因証明情報等です。

 

では、四者間新中間省略登記バージョンについて、考えたい思います。

まず、甲乙丙丁の関係性ですが、それぞれ別の法人や個人であり、互いに関連会社であるなどの事情はないです。

つまり、差益が知られてもよいわけではないとのことでした。

そこで、冒頭に記載のとおり、甲乙間、乙丙間、丙丁間でそれぞれ契約書(第三者のためにする特約付)を作成するという業者の方の方針で良いと思いました。

(地位譲渡なら契約書は1つですが、買主の地位が移るので、買主の地位を得た者に売買代金が知れる(=差益が知られる)ことになります。)

 

【特約】

三者間の場合との差異は、結局のところ、乙が指定した丙が自ら受益の意思表示をせず、さらに丁を指定し、丁が受益の意思表示をすることにあります。

ですから、その内容を特約に加えます。

〈具体的文言〉

新中間省略登記(四者間の場合特約) ※Wordです。

 

【登記原因証明情報】

これに対応する登記原因証明情報です。

登記原因証明情報(所有権移転、新中間省略登記(四者間型)) ※Wordです。

 

ということで、これらを念のため、管轄法務局に確認してもらい、特に問題ないとの回答でしたので、最初の甲乙

間決済(異時決済)に望み、この決済から約半月後の日付で丁名義への移転登記がうたれた謄本を後日受け取りま

した。

なお、このような新中間省略登記に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

責任をもって対応させてもらいます。

 

 

※なお、四者間新中間省略登記については、登記情報633号50頁にも掲載されているらしいです。

 

 

最後に、本日紹介する本は、

福田龍介(2010年)『新・中間省略登記が図解でわかる本』住宅新報社.

です。

題名のとおり、新中間省略登記について書かれた本です。

分かりやすく書かれており、当初ほとんど知識のなかった私ですら、今では、上記のとおり、無事、新中間省略登

記の実務をこなすことができております。

また、書式も場合ごとに掲載されており、実務にとても役立つ書籍であると思います。

(割愛した上記書式も載ってます!!)

本当にお世話になっております。ありがとうございます。

 

さて、次回は、遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議についてか、渉外不動産取引について書きたいと思います。

 

次(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について)

 

 

 

 

親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策

前(合筆・合併後の抵当権抹消の登記識別情報について)

平成29年春頃、大阪府内のマンション1室の購入(現金で購入)に係る登記案件を受任しました。

取引の内容や登記情報の記載、その他必要書類について、特に変わったところはありませんでした。

そして、決済日当日に通常通り立会いをし、お金のやり取りも無事何事もなく終わりました。

直後、買主の方と立ち話にて、お若い方でしたので、現金で購入されたことについて、何気なく伺ってみました。

すると、親より資金援助を受けて購入したとのことでした。

そのため、可能性として税務署から不動産購入資金の出所について、後日「お尋ね」(「お買いになった資産の買

入価格などについてのお尋ね」という質問用紙)が来ることもある旨をお伝えし、一旦別れ、法務局に向かいまし

た。

 

この税務署からの「お尋ね」は、

①過去に所得税を脱税した資金で不動産を購入したのではないか

②不動産の購入に際して親族等から資金援助を受けていないか

(つまり、贈与税が課されることが考えられるが、その贈与税の申告が漏れていないか)

を確認するためのようです。

 

では、①は論外として、②は(上記事案のように)当然あり得るわけですがどのような贈与税対策が取り得るので

しょうか。

一般に、

A、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の特例をつかう。

・・・平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(=住宅取得等資金)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。

B、相続時精算課税をつかう。

・・・原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

C、金銭消費貸借契約を結ぶ

・・・簡単に言うと購入資金の援助をしてくれた人との間で、貸金契約を結ぶということです。つまり、購入資金を贈与してもらったのではなく、いずれ返済することとするのです。もちろん、その証拠として金銭消費貸借契約書(借用書)を作成します。内容も、返済期間や毎回の返済額などについて不自然でないように作成する必要があります。

が考えられるようです。

 

なお上記の事例の顛末は伏せますが、司法書士としてすべき最低限かつ最大限の情報提供はできたのかなと思います。

※注意:具体的事案である税務(相談・手続き)については、依頼者の意向を踏まえ、税理士の先生を紹介するなどしています。

 

最後に、本日紹介する本は、
吉澤大(2014年)『〈2時間で丸わかり〉不動産の税金の基本を学ぶ』かんき出版.
です。

なお上記の「お尋ね」や各制度等については、80頁以下、246頁以下に記載されています。

この本は、不動産に関する各場面ごとに課されうる税金(国税以外も含め)や各種税制度について、平易に書かれているものです。

不動産に関する税について、勉強するにはよい入門書ではないかと思います。

思うに、自分にとって門外漢な分野の本は、最初はやはり入門書的な本を努めて買うべきです。

いきなり専門書ですと、通読すら辛くなりますから(最初に買った本を結局最後に読むことがたまにあります)。

次回は、四者間新中間省略登記のはなしか、遺言(遺産分割方法の指定)について書きたいと思います。

→次(四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について)

 

 

 

合筆・合併後の抵当権抹消の登記識別情報について

平成29年3月頃、大阪市内の土地取引に係る登記案件を受任しました。
内容としては、根抵当権抹消及び所有権移転でありごく普通のものでしたが、登記情報を確認してみると表題部に平成29年2月某日付合筆、同日付分筆の記載がありました。
図解すると以下の通りです。

100-3
102-2
↓   ☜平成29年2月某日第〇〇〇〇号 合筆
100-3
↓   ☜平成29年2月某日第〇〇〇〇号 分筆
100-3
100-14

さて、この場合1件目(根抵当権抹消)、2件目(所有権移転)の登記申請に提供するべき登記識別情報は何になるのでしょうか。

普通に考えれば、
1件目(根抵当権抹消)は、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」の登記識別情報
2件目(所有権移転)は、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」または、合筆後発行の「100-3」
となると思いました。

ただ、念のため、いろいろ調べてみると、1件目について面白い先例がありました。
即ち、「平19.10.15民二2205」です。
これによれば、「・・・提供すべき登記識別情報は、合筆の登記又は合併の登記後の存する土地又は建物の登記記録に記録されている担保権の登記名義人についての登記識別情報で足りる。」としています。

これを上記に当てはめれば、合筆前発行の「100-3」の登記識別情報のみを提供すれば足ることになるようです。
理由は、合筆等の段階で、各物件の担保権の内容が完全に同一であることが、確認されているからでしょうか?

もっとも、多くは金融機関が登記義務者であり、登記識別情報等の保管はしっかりしているはずで、合筆前のすべての登記識別情報通知を預かれるため、実務的にはあまり問題にならないのかなと思います。
実際、この案件でも当然のように、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」を預かれました。

最後に、本日紹介する本は、
青山修(平成29年)『抹消登記申請MEMO』新日本法規.
です。

なお上記の先例は98頁に掲載されています。
この本は、タイトルに「抹消登記」とありますので、抵当権や根抵当権の抹消登記について書かれたものかと思いきや、所有権の抹消登記、仮登記抹消、用益権の抹消や表題登記の抹消なども解説しています。
このサイズの本(厚さ含め)は、持ち運びが楽で電車内でも気軽に読めるので、個人的に好きです。

次回は、四者間新中間省略登記のはなしか、直接登記とは関係のないことを載せたいと思います。

次(親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策)