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①定款PDFファイルの名前について、②印鑑証明書と在留期間について、③解散登記から10年による閉鎖(商業登記規則81条第1項による登記記録閉鎖)からの復活について

渉外取引②(非居住者による不動産取引(購入)に係る外為法上の届出と納税管理人の申告について))←前

今回は商業登記に関するお話を3つまとめて書きたいと思います。

 

①9月上旬、大阪市内を本店とする株式会社設立登記手続きを受任しました。
ごく普通の発起人=代取の株式会社でした。

株式会社設立登記の一過程として、定款を作成し、公証人に認証してもらう必要があります。
具体的には、司法書士が電子署名をした定款(PDFファイル)を、公証役場に送信し、嘱託人として司法書士が公証役場に必要書類等及び費用を持って出頭します。
そこで、認証後の定款ファイルをもらいます。

・・・電子定款作成・認証の場合

 

さて、この件でもいつも通り、PDFファイルを送信し公証役場に出頭しました。
ところが、公証役場に出頭し手続きが始まると、システム上エラーになり認証手続きができないと告げられてしまいました。
どういうことかというと、上記、公証役場に送信するPDFファイルのファイル名について、字数制限(記号についても一部制限あり)があるというのです。
即ち、半角英数字で31文字まで、全角文字のみの場合は15文字(全角は2文字扱い)まででないと、公証役場のシステム上エラーになってしまうそうです。
私は、仕方なく事務所に戻りファイル名を半角にして再送信し再度公証役場に行きました。
幸い、事務所と公証役場がそれほど遠くないので良かったです。

個人的には、商号が長い会社もあるわけですし、それをそのまま「株式会社〇〇定款」とファイル名にできない場合があるというのもどうかと思います。

 

②11月頃、大阪市内を本店とする株式会社設立登記手続きを受任しました。
発起人1人、代取2人の株式会社でしたが、依頼者の内1人は外国籍で、居住者から非居住者になる方でした。
どういうことかというと、とある在留資格により日本で住民登録されており、その期限が切れてしまう直前に印鑑証明書を取得され、期限が切れる前に本国に一旦帰国されました。
この段階で、その印鑑証明書により会社設立をしてほしいとの依頼があったのです。

確かに3ケ月以内発行のものではありますが、登記申請時には、在留期間がおそらく過ぎてしまう(依頼時点では期間内)ことになります。
すると、期間内の日付で作れる(期間内に受任、作成等ができるから)定款等の住所の記載はともかく、登記簿上の代表取締役の住所について、印鑑証明書記載の住所と同じ住所を登記することになりますが、
申請時には在留資格はなくなっており(=日本に住所はないことになる)、その代取の日本の住所につき不実の登記になるのではないか。
と考えました。

もちろん、登記を通うそうと思えば、通るとは思いますが、少し問題がありそうでしたので、在留期間が間もなく切れる方については、別途本国で印鑑証明書の代わりとなる宣誓供述書を作成してもらうことにしました。

 

③11月頃、知り合いの社長より、「昔やっていた親族の有限会社を活用(税金対策とか)したいのだが、知らぬ間に、登記簿(記録)が閉鎖されている。これを復活できるか」という旨の問い合わせがありました。
当初、てっきり、みなし解散か何かのはなしと思っていました。

しかし、登記記録を確認してみると、「商業登記規則81条第1項による登記記録閉鎖」とありました。
どうやら、解散登記から10年経過すると、職権閉鎖されうるようです。

条文によれば、「清算を結了していない旨の申出」をすれば81条3項により復活することができるようでしたが、
具体的にどのような書面(内容)がいるのか、その書面と同時に会社実印の届出もするべきか、添付書面(清算結了していないことが分かる資料的なもの 例えば会社名義の財産の存在を推認させるもの?)
が必要か否か確認がしたく、管轄法務局に問い合わせてみました。
幸いこれに関する資料があるとのことでしたので、後日、別の登記申請の折に、その資料の写しをもらいに行きました。

それによると、申出書の様式の規定はないものの、申出書が該当登記用紙に係る会社の代表者からの申出の意思が明確であれば足りることから、
①会社の商号及び本店並びに代表者の氏名及び住所
②代理人によって申出をするときは、その氏名及び住所
③まだ清算を結了していない旨
④年月日
⑤登記所の表示
の事項を記載し、会社代表者又は代理人が記名押印の方法で差し支えない。
そうです。

(参考)清算未了申出書 ※wordです。

また、会社実印の届出については、同時にしなければならないことはないが、その方がよいとのことでした。

 

ちなみに、そもそもの解散理由は、みなし解散とかではなく、社員総会の決議による解散でした。
といいますか、㈲はみなし解散なかったですね笑(整備法32条)

・・・ブログ更新の折にみなし解散について調べていて思い出しました。

いやでも、最低資本金額未達成(300万円)からのみなし解散はありえるのですよね、確か。

 

商業登記は難しいですね。

商業登記に精通されている先生を知っていますが、純粋にすごいと思います。

特に、会社法ができる前、商法時代の条文知識などはすごかったです。

 

さて次回は、氏の変更許可、遺言書の書き方(株式がある場合)または会社登記について書きたいと思います。

次→(遺言書への株式の記載方法について)

渉外取引②(非居住者による不動産取引(購入)に係る外為法上の届出と納税管理人の申告について)

渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)←前

平成29年7月頃、大阪市内のマンションについて、非居住外国人(中長期以上の在留資格なし)を買主とする不動産取引に係る登記案件を受任しました。
買主の方は、本邦に住民登録はなく従って住民票は用意できません。
そのため、これに代わる書面として、買主の方の本国の管轄公証役場で宣誓供述書を作成してきてもらい、住所証明情報とすることになりました。

また、購入の目的は投資用またはセカンドハウス用(いずれか本人も決めかねている)であり、とにかく居住用ではありませんでした。

取引自体は、買主様が日本語がある程度理解できる方であることもあって、特に問題なく決済後登記申請まで至りました。

 

さて、非居住外国人が非居住用で日本の不動産を購入した場合には、その後どのような手続きが一般的な場合に比べて必要なのでしょうか。
(権利証やその注意書きの英訳、将来の売却時に代金の源泉徴収(所得税法161Ⅰ⑤、212Ⅰ、213Ⅰ②、復興財源確保法28Ⅰ)とか、保有したまま死亡した場合の渉外相続(中華人民共和国の場合:【日本法】法の適用に関する通則法36、41及び【中国法】渉外民事関係法律適用法31但書 ∴根拠法は日本法)とかは別にして)

以前にも触れましたが、①外為法上の届出(資本取引)と②納税管理人の申告です。

①については、一部例外(外為報告省令5条2項10号)を除き、取引から20日以内に日銀経由財務大臣あてに事後報告をしなければなりません。
(同じく会社設立時も事前届出・事後報告が必要なことがある点注意)

②については、非居住者が所有する不動産に課税される各種税金につき、それぞれ納税管理人申告書の提出が必要なようです。
即ち、(大阪市内の物件ですと)

a不動産取得税ならば府税ですから府税事務所、

b固都税ならば市税ですから市税事務所そして、

c個人で賃貸収益を得れば所得税(法人なら法人税)が課され国税なので税務署に申告書を提出します。

※大阪の場合、abは物件所在地がどこかに応じて管轄税事務所が細かく決まっているので注意
※cは納税管理人を選任した納税者本人の納税地(国税通則法117条2項の「納税管理人に係る国税の納税地」の意義)(所得税法15条、同法施行令54条)
(具体的内容は割愛!!「日本加除出版 渉外不動産取引に関する法律と税金 196頁以下参照」)
cについては、完全に税理士先生の範疇と思いますので素直にお力添えいただくのが正しいと思います。賃貸収入があるなら確定申告も必要かと思いますし。

 

というわけで、登記完了後速やかに、業者様と役割分担しながら必要な手続きをしました。

※①について外為法上の届出(資本取引)

 

そろそろ、上記の本の紹介をしたいのですが、まだ読み切った感がないので、やめておきます。
それぐらい濃い本です。

 

さて、次回は、遺産分割協議(協議後書面化前に2次相続発生)、氏の変更または商業登記に関する小ネタについて書きたいと思います。

次→①定款PDFファイルの名前について、②印鑑証明書と在留期間について、③解散登記から10年による閉鎖(商業登記規則81条第1項による登記記録閉鎖)からの復活について

渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)

(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について)←前

平成29年5月中旬、買主を外国人個人(非居住者:中長期以上の在留者でない)とする不動産取引(土地・建物:一戸建て)に係る登記案件を受任しました。

内容的には、抹消→移転 のみ(現金決済)でした。

もちろん、非居住者ですので、本邦の市区町村に住民登録はありません。

そこで、本国で宣誓供述書を作成してもらい、翻訳文をつける必要がありますが、この方の場合は、宣誓供述書の後半の頁で日本語訳がついていました。
※本国に住民登録制度があり、住所証明情報として適格性があればそれに翻訳文をつける方法でもいいとは思いますが、この方の国にはありません。

また、早い段階で、この宣誓供述書の写しを確認できたので、ここまでは特に問題はなにもありませんでした。

 

次に、外為法上の届出(資本取引)が必要か、また納税管理人が必要か、どうか知りたかったので、多分必要だろうと思いつつ、購入目的を業者に聞いたところ、買主は日本に移住し、会社を創業する予定であり、そのために購入するとのことでした。

ということは、ご自身の居住用ですから、外為法上の届出も、納税管理人も不要になるはずです。
※外為法上の届出:外為報告省令5条2項10号イ、納税管理人:国税通則法117条1項参照

 

しかし、今度は、住宅用家屋証明による減税の適否 及び 適用されるとして具体的に何が添付書類として必要か が問題になります。

租税特別措置法には、国籍要件はないので、日本人でないことのみで適用されないことはないはずですが(実際、永住者の方で住宅ローンを組んで減税適用ありの決済もたまにありますし)、非居住者であっても、自己の居住用に不動産を購入するならば、適用されるのでしょうか。

少し調べましたが、本当に居住用で不動産を購入するのであれば、適用されるようでした(日本加除出版 渉外不動産取引に関する法律と税金 170頁)。

では、市税事務所への添付書面として具体的に何が、一般的な場合に加えて必要なのでしょうか。

管轄の市税事務所と何度か電話でやり取りしたところ、本当に今回の購入目的が居住用であることが確からしいことの分かる書面が必要とのことでした。
(つまり単なる日本での別荘・セカンドハウスではないことが分かるもの)

ということで、申請書及び証明書と共に、以下の書面を添付することにしました。

・申立書
・登記情報(照会番号付き)
・登記原因証明情報
・宣誓供述書:住民票の代わり
・同居親族からの申立書
行政書士先生の依頼確認書(在留資格認定証明書申請(在留資格:「経営・管理」)の依頼を受けていること及びその申請準備中であることにつき)

念のため、担当市税事務所に確認を求め、上記で過不足ないとの回答でしたので、決済当日を迎え、決済後何事もなくその市税事務所で減税証明書を取得し、法務局に向かい登記申請しました。

※あくまで一例であり、管轄の市税事務所・担当者或いは、取引当事者の状況により判断が変わることがあり得ます。

 

 

この登記手続きで感じたことは、常に固定概念?を疑った方がいいなということです。

私は、なぜか、非居住者の外国人が買主になる場合には、減税の適用がないものとばかり思い込んでいた節がありました。

「もしかしたら、減税の適用があるのでは?」と思ったのは、その少し前に、同じ国の方(永住資格あり)が買主となる減税の適用のある登記手続きを実際にやっていたためです。

よい教訓になりました。

 

次回は、渉外取引②か、遺産分割協議について、書きたいと思います。

→次(渉外取引②非居者による不動産取引(購入)に係る外為法上の届出と納税管理人の申告について

遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について

前(四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について)

平成29年5月頃、大阪府下のとある市の不動産(土地・建物)につきまして、公正証書遺言に基づく相続登記(不動産の名義変更)案件を受任しました。

その公正証書遺言の内容は、いわゆる遺産分割方法の指定(特定の相続人に、特定の相続財産を「相続させる」旨の文言がある)でした。

単にこれだけですと、よくあることなのですが、問題は、複数ある不動産のうち土地の一部(畑)について、遺言書の内容とは異なる相続人が取得したいとの相続人の方々の希望があったことでした。

つまり、遺産分割方法の指定により記載された遺言に反する遺産分割協議が(実体法的に、また登記手続法的に)できるかという問題です。

そもそも、この「相続させる」旨の遺言の効果については、

遺産分割方法指定説(民法908条)

:現物分割、価格分割、代償分割のうち、いずれの分割方法によるかを遺言によって指定しているとするもの

遺贈説(民法964条)

:そのまま

遺産分割効果説

:遺産分割の方法の指定であることを前提としつつ、その指定に遺産分割の効果を認めるとするもの

の3説があり、

いわゆる香川判決(最判平成3年4月19日)において、遺産分割効果説が採られました。

即ち、
「右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条(民法908条)にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ない」
また、
「何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される」
と判しました。

またこれを受けて、
「特定の不動産を「長男A及び二男Bに各2分の1の持分により相続させる」旨の遺言書とともに、A持分3分の1、B持分3分の2とするA及びB作成に係る遺産分割協議書を添付して、当該持分による相続登記の申請はすることができない」との登記研究546-152も出されました。

理由としては、
「相続させる」旨の遺言があり、遺言者が死亡した場合、直ちに、その内容の遺産分割協議が完了した状態になると考えるためです。
(通常、相続が開始すると相続財産は、共同相続人間で、過渡的・浮動的な共有(または合有とする考えがある)となり、これを遺産分割協議等により相続時に遡及して権利帰属を確定させますが、
「相続させる」旨の遺言がある場合には、相続開始と同時に、遺産の権利帰属が確定してしまうこととなります。)

ですから、このような場合、遺言書通りに「相続」を原因とする登記をし、次に共有物分割・売買等により、相続人らの望む権利関係をつくることになるはずです。

 

しかし、さいたま地方裁判所平成14年2月7日判決 によれば、
「(香川判決(最判平成3年4月19日)を踏まえた上で)しかしながら,このような 遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,これと異なる内容の遺産分割が全相続人に よって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。
被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,そうでなければ, 被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。
法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが 可能であるし,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。
また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異 なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図 るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。」
としています。

また、この判決と同様の結論の下級審判断もいくつかあり、また同様の結論を説く書籍も普通にあります。

 

ということで、管轄法務局に事前相談することとしました。

相談票(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議と登記 相談票)を流し、後日電話がありました。

色々と、法務局の方でも調べて頂いたようでしたが、

回答は、香川判決・登記研究546-152を前提にするもので、

①遺言による相続登記 ②売買・贈与による移転登記 をするべしとするものでした。

もっとも、他の法務局他の担当者でも必ず同じ結論かは分かりません。

(ところで、この件は、不動産(土地)が農地であり、この農地の帰属を望む相続人の方が、遺言の文言では共有者にならない方ですので、持分放棄ができず、農地法3条の許可が必要になってしまいます。)

なお、同じような場面で、法務局にこのような遺言書を添付せず、相続人方の望む内容の遺産分割協議書を添付すれば、問題なく登記は「相続」を原因として、通るとは思いますが、それはするべきとは思いませんし(遺言書、遺産分割協議書の両方を添付して申請するならばよいですが)、

悩ましいです。

 

ただ、言えることは、遺言書作成に関わらせてもらう場合には、

遺言者の意思はもちろんとして、税務面に加え、この点も(「遺産分割を禁じる」旨を入れるかも含め)考慮するべきであると感じました。

 

最後に、本日紹介する本は、

青木登(平成26年)『登記官からみた相続登記のポイント』新日本法規.

です。

題名のとおり、著者は元登記官の方であり、また「登記官からみた」シリーズは、これ以外に何冊かあります。
なお、上記のような事案については、144頁以下に書かれており、
①被相続人とその地位を包括的に承継する各共同相続人の全員はイコールの法的立場にあると観念できること
②遺産分割協議の本質は各共同相続人間の相続持分の交換類似の処分行為と考えれば、遺言の効力が発生し、権利を取得した相続人と他の相続人との間で、権利を交換等したと考えることもできること
を理由として、
「相続させる」旨の遺言があったとしても、相続の登記が未了であれば、遺産分割協議により直ちに遺言と異なる内容の相続の登記をすることができる
としています。

つまり、私の法務局への事前相談に対する回答とは、結論を異にするものです。

うーん、悩ましいです。

 

 

 

さて、次回は、渉外不動産取引(おそらく何回かに分けます)か遺産分割協議書(遺産分割協議後その相続人がさらに死亡した場合)について書きたいと思います。

 

次(渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)

四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について

前(親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策)

平成29年4月下旬頃、大阪市内の不動産(マンション一室)の売却に係る登記案件を受任しました。

この取引は、いわゆる三ため契約(第三者のためにする特約)により、甲から丁(売買契約は、甲乙間、乙丙間、丙丁間の3つ必要です)に直接所有権を移転(登記の動きも同様)したいとするものでした。

問題は、三者間新中間省略登記の場合は、売買契約の特約及び登記原因証明情報などの書式が広く出回っているのですが、これが四者間新中間省略登記となると、なかなかそれらの書式が見当たらないことでした(もっとも、基本的には、三者間と同じなのですが)。

そこで、三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における特約及び登記原因証明情報等をベースにして、四者間新中間省略登記バージョンを作成し、管轄法務局に対する事前の相談票による確認をし、それをもって、実際の登記手続き等を進めることにしました。

 

ではまず、ベースになる三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における契約書に加える特約及び登記原因証明情報等について確認します。

【前提】

・売買契約書自体は、第一の契約:甲乙間、第二の契約:乙丙間の2つ必要です。

(買主の地位譲渡なら1つです。但し、買主の地位が移るので、丙に売買代金が知れることになります。また、地位譲渡の対価は不動産所有権ではなく、包括的な意味での買主の地位ですので、対価全体(土地・建物の区別なく)について消費税が課される可能性があります。)

・第一の契約の買主である乙が自ら所有権を取得せず、第三者(=丙)を指定して、この第三者が受益の意思表示

をし、甲から直接丙に所有権を移します。繰り返しますが、所有権は、甲から一時的にでも乙には移らず、直接丙

に移転します。よって、所有権移転登記の当事者も権利者:丙、義務者:甲となります。

・効果として、乙につき、不動産取得税や登録免許税などの不動産流通税が課されません(乙は一時的にでも所有権を取得していないから)。

⇔決して、中間省略登記が再びできるようになったわけではないです(判決による登記(不動産登記法63条)など一部を除き)。

新中間省略登記と呼ばれることが多いのは、効果がかっての中間省略登記と同じで、理解されやすいためだと思います。

【特約】

第一の契約:甲乙間

①第三者のためにする契約

②所有権留保

③受益の意思表示の受領委託

④買主の移転債務の履行の引受け

第二の特約:乙丙間

①第三者弁済

〈具体的文言〉

新中間省略登記(三者間の場合特約) ※Wordです。

 

【登記原因証明情報】

登記原因証明情報(所有権移転、新中間省略登記(三者間型)) ※Wordです。

※甲、乙、丙の連名にするか、それぞれ作成するかは、別にして、甲だけでなくそれぞれの記名押印をもらう方が無難と思います(登記研究708号141頁以下参照:真正担保のため及び乙は登記義務者に準ずるから)。

 

【その他書面】

記名押印者とその他書面

甲:所有権直接移転証書、受益の意思表示受領委任状

乙:所有権移転先指定書

丙:所有権取得意思確認書

割愛!

 

以上が、三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における契約書に加える特約及び登記原因証明情報等です。

 

では、四者間新中間省略登記バージョンについて、考えたい思います。

まず、甲乙丙丁の関係性ですが、それぞれ別の法人や個人であり、互いに関連会社であるなどの事情はないです。

つまり、差益が知られてもよいわけではないとのことでした。

そこで、冒頭に記載のとおり、甲乙間、乙丙間、丙丁間でそれぞれ契約書(第三者のためにする特約付)を作成するという業者の方の方針で良いと思いました。

(地位譲渡なら契約書は1つですが、買主の地位が移るので、買主の地位を得た者に売買代金が知れる(=差益が知られる)ことになります。)

 

【特約】

三者間の場合との差異は、結局のところ、乙が指定した丙が自ら受益の意思表示をせず、さらに丁を指定し、丁が受益の意思表示をすることにあります。

ですから、その内容を特約に加えます。

〈具体的文言〉

新中間省略登記(四者間の場合特約) ※Wordです。

 

【登記原因証明情報】

これに対応する登記原因証明情報です。

登記原因証明情報(所有権移転、新中間省略登記(四者間型)) ※Wordです。

 

ということで、これらを念のため、管轄法務局に確認してもらい、特に問題ないとの回答でしたので、最初の甲乙

間決済(異時決済)に望み、この決済から約半月後の日付で丁名義への移転登記がうたれた謄本を後日受け取りま

した。

なお、このような新中間省略登記に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

責任をもって対応させてもらいます。

 

 

※なお、四者間新中間省略登記については、登記情報633号50頁にも掲載されているらしいです。

 

 

最後に、本日紹介する本は、

福田龍介(2010年)『新・中間省略登記が図解でわかる本』住宅新報社.

です。

題名のとおり、新中間省略登記について書かれた本です。

分かりやすく書かれており、当初ほとんど知識のなかった私ですら、今では、上記のとおり、無事、新中間省略登

記の実務をこなすことができております。

また、書式も場合ごとに掲載されており、実務にとても役立つ書籍であると思います。

(割愛した上記書式も載ってます!!)

本当にお世話になっております。ありがとうございます。

 

さて、次回は、遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議についてか、渉外不動産取引について書きたいと思います。

 

次(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について)

 

 

 

 

親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策

前(合筆・合併後の抵当権抹消の登記識別情報について)

平成29年春頃、大阪府内のマンション1室の購入(現金で購入)に係る登記案件を受任しました。

取引の内容や登記情報の記載、その他必要書類について、特に変わったところはありませんでした。

そして、決済日当日に通常通り立会いをし、お金のやり取りも無事何事もなく終わりました。

直後、買主の方と立ち話にて、お若い方でしたので、現金で購入されたことについて、何気なく伺ってみました。

すると、親より資金援助を受けて購入したとのことでした。

そのため、可能性として税務署から不動産購入資金の出所について、後日「お尋ね」(「お買いになった資産の買

入価格などについてのお尋ね」という質問用紙)が来ることもある旨をお伝えし、一旦別れ、法務局に向かいまし

た。

 

この税務署からの「お尋ね」は、

①過去に所得税を脱税した資金で不動産を購入したのではないか

②不動産の購入に際して親族等から資金援助を受けていないか

(つまり、贈与税が課されることが考えられるが、その贈与税の申告が漏れていないか)

を確認するためのようです。

 

では、①は論外として、②は(上記事案のように)当然あり得るわけですがどのような贈与税対策が取り得るので

しょうか。

一般に、

A、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の特例をつかう。

・・・平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(=住宅取得等資金)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。

B、相続時精算課税をつかう。

・・・原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

C、金銭消費貸借契約を結ぶ

・・・簡単に言うと購入資金の援助をしてくれた人との間で、貸金契約を結ぶということです。つまり、購入資金を贈与してもらったのではなく、いずれ返済することとするのです。もちろん、その証拠として金銭消費貸借契約書(借用書)を作成します。内容も、返済期間や毎回の返済額などについて不自然でないように作成する必要があります。

が考えられるようです。

 

なお上記の事例の顛末は伏せますが、司法書士としてすべき最低限かつ最大限の情報提供はできたのかなと思います。

※注意:具体的事案である税務(相談・手続き)については、依頼者の意向を踏まえ、税理士の先生を紹介するなどしています。

 

最後に、本日紹介する本は、
吉澤大(2014年)『〈2時間で丸わかり〉不動産の税金の基本を学ぶ』かんき出版.
です。

なお上記の「お尋ね」や各制度等については、80頁以下、246頁以下に記載されています。

この本は、不動産に関する各場面ごとに課されうる税金(国税以外も含め)や各種税制度について、平易に書かれているものです。

不動産に関する税について、勉強するにはよい入門書ではないかと思います。

思うに、自分にとって門外漢な分野の本は、最初はやはり入門書的な本を努めて買うべきです。

いきなり専門書ですと、通読すら辛くなりますから(最初に買った本を結局最後に読むことがたまにあります)。

次回は、四者間新中間省略登記のはなしか、遺言(遺産分割方法の指定)について書きたいと思います。

→次(四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について)

 

 

 

合筆・合併後の抵当権抹消の登記識別情報について

平成29年3月頃、大阪市内の土地取引に係る登記案件を受任しました。
内容としては、根抵当権抹消及び所有権移転でありごく普通のものでしたが、登記情報を確認してみると表題部に平成29年2月某日付合筆、同日付分筆の記載がありました。
図解すると以下の通りです。

100-3
102-2
↓   ☜平成29年2月某日第〇〇〇〇号 合筆
100-3
↓   ☜平成29年2月某日第〇〇〇〇号 分筆
100-3
100-14

さて、この場合1件目(根抵当権抹消)、2件目(所有権移転)の登記申請に提供するべき登記識別情報は何になるのでしょうか。

普通に考えれば、
1件目(根抵当権抹消)は、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」の登記識別情報
2件目(所有権移転)は、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」または、合筆後発行の「100-3」
となると思いました。

ただ、念のため、いろいろ調べてみると、1件目について面白い先例がありました。
即ち、「平19.10.15民二2205」です。
これによれば、「・・・提供すべき登記識別情報は、合筆の登記又は合併の登記後の存する土地又は建物の登記記録に記録されている担保権の登記名義人についての登記識別情報で足りる。」としています。

これを上記に当てはめれば、合筆前発行の「100-3」の登記識別情報のみを提供すれば足ることになるようです。
理由は、合筆等の段階で、各物件の担保権の内容が完全に同一であることが、確認されているからでしょうか?

もっとも、多くは金融機関が登記義務者であり、登記識別情報等の保管はしっかりしているはずで、合筆前のすべての登記識別情報通知を預かれるため、実務的にはあまり問題にならないのかなと思います。
実際、この案件でも当然のように、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」を預かれました。

最後に、本日紹介する本は、
青山修(平成29年)『抹消登記申請MEMO』新日本法規.
です。

なお上記の先例は98頁に掲載されています。
この本は、タイトルに「抹消登記」とありますので、抵当権や根抵当権の抹消登記について書かれたものかと思いきや、所有権の抹消登記、仮登記抹消、用益権の抹消や表題登記の抹消なども解説しています。
このサイズの本(厚さ含め)は、持ち運びが楽で電車内でも気軽に読めるので、個人的に好きです。

次回は、四者間新中間省略登記のはなしか、直接登記とは関係のないことを載せたいと思います。

次(親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策)