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現在非居住者の中国人が、日本において居住者であったころに購入した不動産を売却する場合について

会社設立登記において、印鑑証明書の氏名が英字(ピンイン)表記になっている場合)←前

平成30年夏頃、現在は在留資格を失い中国に帰国しているが、かつて日本で中長期以上の在留資格を持ち(=日本で住民登録がなされていた)、大阪市内の不動産を購入されていた方が、その不動産を売却したいとするご依頼を頂きました。

今回は、この件について、振り返りたいと思います。
(自身の復習の意味も兼ねております。)

この件で重要だと思う論点は、4点ありました。
①非居住者又は外国法人の不動産の売却代金に対する買主の源泉徴収義務について
②かつて日本で住民登録がなされていたが、現在はなくなった場合の住所変更登記について
③売主が海外在住の外国人であるが権利証を提供できない場合について
④中国の公証処発行の公証書の日本語訳(特に住所)について

 

 

①非居住者又は外国法人の不動産の売却代金に対する買主の源泉徴収義務について
そもそも、所得税法・復興特別所得税法上、日本の不動産取引の売主が非居住者(=中長期以上の在留資格なし)である場合、原則として、買主には、買主が支払う売買代金の10.21%について源泉徴収義務があります。
具体的には、支払った月の翌月の10日までの所轄税務署に納める必要があります。なお、支払が手付と残代金のように2度に分かれてなされる場合は、それぞれ支払った月の翌月の10日までに納めねばなりません。
なお、買主には源泉徴収義務がありますから、仮に売買代金の全額を売主に支払ってしまった場合でも、売買代金の10.21%を税務署から納めることを求められます。
そして、非居住者又は外国法人である売主は後に確定申告をし、譲渡所得がない場合や売買代金の10.21%よりも少ない場合には、その額を還付してもらえます。
また、確定申告の結果、日本に所得税をいくらか納めたこととなった場合には、外国税控除として、本国で使うことができるようです。

まさに、今回は、非居住者である方について、日本の不動産を売却するという話ですから、この買主に対する売買代金10.21%の源泉徴収義務があるのか否か検討しなければなりません。
もし、源泉徴収義務が買主にあるならば、そのことを売主・買主双方(及び仲介業者)に説明し理解を得なければなりません。
また、売買契約の所有権移転時期特約についても要検討になると思います。

 

実は、この買主の源泉徴収義務は、非居住者が日本の不動産を売却する場合ならば、常にあるのではなく、例外があります。

例外①買主も非居住者 かつ 海外で取引(海外払い)をした場合

例外②買主が居住者ならば、売買代金が1億円以下 かつ 買主または親族の居住用

のいずれかの要件を満たす場合がそれです。
(なお、売買代金が1億円以下というのは、固都税の精算金も含めた額です。法的性質は、売買代金の一部のため)

 

そして、今回の取引の買主は、居住者で、売買代金も1億円以下であり、買主及び家族の居住目的で購入するものでした。
よって、買主には源泉徴収義務がないことになります。
(但し、売主には、申告義務があります。)

 

※税務についての話は、書籍の情報に加え、顧問の税理士の先生に事前に相談し調べて頂いております。
※司法書士は税務について、本来門外漢ですし、どこまで関与すべきか悩ましいところですが、制度の説明程度はできた方が良いかと考えています。司法書士なら誰でもできる誰でもやることをしていては、若手が成りあがることはできないと考えます。その意味でも、ブルーオーシャンかつ成長が見込まれるこの分野での専門性をつけ、差別化を図ることは大変意義のあることと思います。
あと、そもそも、所得があれば、日本に納税してもらうのは当たり前ですし。

 

②かつて日本で住民登録がなされていたが、現在はなくなった場合の住所変更登記について
この件の売主は、かつて日本で住民登録がなされており、その時期に大阪市内の不動産を購入されているため、登記上の住所は日本の住所です。しかし、現在は、在留資格が切れており(=日本の住所は現在なし)、中国に帰国しています。
すると、当然、売買による所有権移転登記の前提として、住所変更登記をせねばなりませんが、住所の沿革を各種証明書で完全につけることはできず、上申書で対応することになるはずです。
具体的には、住民票除票により、日本での最後の住所=登記申請前の登記上の住所は、証明できました。
また、現在の住所も公証書(宣誓供述書)で証明できます。
しかし、当然、日本の住民票除票には、「年月日中華人民共和国(〇〇省)〇〇市・・・に住所移転」などとは記載されていませんから、その部分の繋がりを証明できないのです。
ですから、上申書で対応するわけです。

さらに、住所移転の原因日付をいつにするのかも少し悩みました。個人的には、在留期間満了日の翌日かなと考えていましたが、法務局によれば、実際に帰国した日付とのことでした。
理由は、在留期間が経過しても日本にいる場合があるためとのことです。
そして、その日付は上申書の中に記載し、明らかにすればよいとのことでした。

 

③売主が海外在住の外国人であるが権利証を提供できない場合について
売主(及び包括代理人)に事前に必要書類を案内した段階では、登記識別情報通知はあるとの話でしたが、実際に包括代理人にお会いして、確認してみると、登記識別情報通知はなく(謄本を持参)、公証書も3か月以内発行のものではありませんでした。
(※売主本人の本人確認はテレビ電話にて行いました。)
(※公証書は、署名証明ではなく、印鑑・印影についてのものでした。ですから、3か月以内のものが必要です。)
直ぐに、公証書は再作成してもらうことになりましたが、紛失(失念)した権利証について、どうしようかと迷いました。

仮に、本人確認情報を作成するとなれば、必ず売主本人と面談しなければなりません。
そして、売主本人は事情により来日することが出来ないとのことでした。
(※その事情はやむを得ないものでした。)
また、売主包括代理人が飛行機やホテルの手配も売主負担でできるとのことでしたので、少し考えた私は腹をくくり、上海に乗り込んでやろうと決めました。
(※売主の住所は、上海ではありません。単に落ち合う場所です。)

早速、大阪のパスポートセンターに、パスポート発行に掛かる時間や必要書類等について、問い合わせ、そのつもりで準備を進めていました。

ところがです。
冷静によく考えてみると、現在中長期以上の在留資格のないこの売主には、不動産登記規則72条2項のいう1号書類も2号書類もありません。
旅券はあるにはありますが(売主本人確認時、居民身分証と共に提示、データも頂いた)、当然、日本国政府発行のものではありません。
念のため、法務局にも確認しましたが、やはり、1号書類には当たらないとの回答でした。
ですから、私が中国に行っても全く意味がなく、結局、事前通知制度を活用する他ないという結論に至りました。
(※中国の公証処の公証員に本人確認・認証してもらった書類を添付することも一瞬考えましたが、まず日本の不動産登記制度を理解してもらうことすら困難と思い諦めました。)

かくして、海外への事前通知制度を活用するという初めて経験をすることになりました。
ここで、海外への事前通知について、日本国内での事前通知の場合と異なること等を確認します。
・まず、通知発送の日から2週間以内ではなく、4週間以内であること
・国内で売主が個人であれば、本人限定受取郵便で発送されますが、海外ですから書留で発送されること
・さらに、海外の外国人に発送する場合でも、訳文などはつかないということ
が挙げられます。

ですから、今回は、売主本人に、
①公証書記載の住所(住所変更後の登記上の住所)に日本の大阪法務局から、事前通知という書類が送付される
②受け取ったら、書類の下部に署名及び公証書の印鑑(公証処で捺印したもの)を押す
③日本の大阪法務局に返送する(ここは、司法書士あてに郵送してもらってもいいとは思いますが。)
をしっかり理解してもらう必要がありました。

 

余談ですが・・・
今回の件で、私は法務局と何度か事前の相談をしていましたが、その際、法務局の方が、売主の権利証がないなどの事実から、日本人でない方は少しルーズ或いは文化が違うというようなニュアンスの発言がありました。
確かに、権利証の紛失ばかりでなく、外国人または外国人が代表取締役の日本法人所有の不動産の取引において、固都税等の滞納が原因で差押が何本も入った不動産の登記申請はたまりあります。
しかし、それらについて司法書士等にも責任の一端はあるのではないかと思います。
例えば、不動産の購入時、買主の日本語能力によっては、発行された権利証や権利証の注意書きについて、せめて英訳(買主の母国語がベストかもしれませんが)ぐらいは付けて返すことや非居住者が買主ならば納税管理人について説明する等するならば、少し変わるのではないかと思いました。

 

④中国の公証処発行の公証書の日本語訳(特に住所)について
本件では、添付書面として、印鑑・印影についての公証書を添付しました。
これは、1件目の所有権登記名義人住所変更登記の登記原因証明情報であり、かつ上申書に押印した印鑑についての印鑑証明書に相当します。また、2件目の所有権移転登記の委任状に押印した売主意思確認としての印鑑証明情報でもありました。
そして、当然、中国の公証処で発行されたものですから中国語で作成されていますが、日本語の翻訳文もつけてくれます。

問題は、この訳文です。

そもそも、中国(及び台湾)の住所氏名の漢字は、法務局の取り扱い上、原則そのまま登記する。しかし、その漢字が日本の漢字でなければ、その簡体字を日本の漢字に置き換えるというものです。

ここで大事なのは、日本の漢字にない場合だけ、置き換えるということです。

ということは、例えば、当事者の住所が公証書の原本(中国語)では、「・・・〇〇道○○里3号楼2単元202号」となっていて、公証処作成の日本語訳では、「・・・〇〇道○○里3号棟2門202号」となっているとき、盲目的にこの日本語訳の記載を申請書等に記載することはできないことになります。
なぜなら、あくまで、「楼」も「単元」も日本の漢字として使えるからです。
もちろん、意味を考えれば、中国語の「3号楼」は日本語の「3号棟」の意味であり、「2単元」は「2門」の意味なのだと思います。

これに気づかないと、補正がとても面倒です。

 

ちなみに余談ですが、日本の公証役場で、原始定款に記載する発起人住所について、公証書の訳文通り作成しても、全く問題になりません。
が、設立登記申請の際には、上記の通り指摘される事があります。
ですから定款作成時から、公証役場に法務局の取り扱いを説明し、登記申請と一致する形で定款を作成する必要があります。

※法務局や公証役場によって、取り扱いが異なることがあります。

 

何はともあれ、無事、登記識別情報通知がレターパックにて、法務局より送付されてきました。

色々、勉強になった案件でした。

 

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会社設立登記において、印鑑証明書の氏名が英字(ピンイン)表記になっている場合

遺言の作成を強く勧める場合:第4回 元外国人の方の相続)←前

平成30年春頃、外国籍の方(中長期在留資格あり)を発起人兼代表取締役とする株式会社設立登記の依頼を受けました。

株式会社設立登記には、当然、原始定款の認証時及び設立登記申請時に、印鑑証明書(中長期以上の在留資格がなければ宣誓供述書(中国本土の場合は公証書という))が必要です。
この方は、前述の通り中長期以上の在留資格を有しているので、本邦で住民登録ができ、印鑑を登録すれば、印鑑証明書が発行されます。

ここまでは、昨今、特に大阪市内の中心部ではよくあることですが、お預かりした印鑑証明書を確認してみると、氏名が日本語ではなく、英字(ピンイン)で記載されていました(なお、通称の表記なし)。
そうすると、定款・各種設立登記添付書面の発起人氏名の記載や役員氏名の記載ひいては登記簿の役員氏名の記載をどうするのかという問題が出てきます。

早速、依頼者に英字(ピンイン)とそれに対応する漢字が併記された公的書面(ここではパスポートの写し)を頂き、またどのように登記簿に役員を表記したいかについて希望を伺いました。
依頼者の希望としては、漢字表記(もちろん必要に応じて日本語の漢字に引き直す)でした。
英字(ピンイン)の読み方をカタカナ表記で登記する余地もあるかと思ったため確認しました。

これを受け、定款及びその他設立添付書面につき、漢字表記にカッコ書きで英字(ピンイン)を併記し、当該印鑑証明書及びパスポートの写しをもって、定款の作成及び登記申請(なお、あくまで申請書に記載するのは漢字表記のみ、よって、登記簿に記載されるのは漢字表記のみ)できないかという相談票を公証役場及び法務局に流しました。
結論的には、公証役場も法務局も、それで問題ないとの回答でしたから、その後の手続きをそのまま進め、無事登記手続きは完了しました。

 

ところで、当初私は、何故ここは日本であるにも関わらず、日本語ではない字で表記された印鑑証明書が発行されうるのか個人的に違和感がありました。そこで、当該印鑑証明書を発行した区役所の住民登録担当者に、その点を伺いました。
すると、まず入管で外国人の登録がなされ、それが住民基本台帳に反映され、その情報が住民票や印鑑証明書に記載されるとのことでした。そして、入管での登録時に英字(ピンイン)でのみ登録がなされると、やはりそれがそのまま住民票や印鑑証明書に記載されるそうです。
ですから、もし、どうしても住民票や印鑑証明書に漢字表記を載せるとなると、入管での手続きからやり直す必要があるようです。
(なお、もし市役所などで通称名が登録できればそれで問題をクリアできる可能性はあるやもしれません。)
その意味で、今回の設立登記時の対応(印鑑証明書+漢字・英字(ピンイン)が併記されたパスポートの写しを添付)は、ある程度確実かつ簡便で良かった思います。

ただ、気掛かりなのは、今回はあくまで商業登記の話である点です。
つまり、登記申請の際に、必要な住民票や印鑑証明書の氏名表記が英字のみであるという問題は、商業登記だけの問題ではなく、不動産登記においても同様の問題が起こりうると思います。
そして、商業登記と不動産登記とでは、後者の方がより審査が厳格なのではないかと思います。
実際、今回の件の相談票に対する回答のため電話で法務局担当者と会話した際も、英字(ピンイン)とその漢字表記が記載された公的書面の写しがあれば、参考につけてもよいとのニュアンスでした。それがあれば法務局も安心して登記できるとのことでした。言い換えれば、必ずしも必要ではなく、発起人の決議書などで、役員が選任・選定されその記載として、漢字表記があれば、それを信頼して登記するとの回答だったのです。同音異字の可能性があるにも関わらずです。
仮に、不動産の買主が、中長期以上の在留者資格をお持ちで、日本で住民票が発行されるがその氏名の表記は英字(ピンイン)のみで通称もなく、登記簿に記載する買主の氏名表記を漢字で行いたいとすると、果たして、当該住民票及びパスポート等の写しだけで通るのでしょうか。
時間的余裕があれば、入管での手続きからやり直してもらうべきなのでしょうか。
ではもし、決済直前に依頼が来たらどうすのか。追完で対応か。

中国人の不動産業者様には、せめて決済の2週間前には、連絡を頂くよう伝えておくことが、結局最善かもしれません。
おそらく、不勉強な私が想像もしない問題点が他にもあるやもしれませんから笑。

 

このような事案について、大阪本町にて相談を希望される方(夜間相談や出張相談もOK)は、お気軽にメール・電話でお問い合わせくださいませ。

 

※注意:全ての公証役場及び法務局で同様の取り扱いがなされるかは分かりません。

追記:住民票については、氏名表記(英字)の場合において、カタカナでその読み方を備考として記載してもらうことが可能だそうです。そして、その備考欄のカタカナをもって登記できるようです。

※法務局に事前確認する方がいいでしょう。

 

次→(現在非居住者の中国人が、日本において居住者であったころに購入した不動産を売却する場合について

遺言の作成を強く勧める場合:第4回 元外国人の方の相続

遺言の作成を強く勧める場合:第3回 離婚・再婚された方の相続)←前

次に遺言の作成を強く進めるのは、元外国人の方の場合です。

 

仮に、亡くなった方が日本国籍でないならば、そもそも、どこの国の法律が適用されるのかを判断しなければなりません。

例えば、中華人民共和国の国籍をお持ちの方であれば、死亡時の常居所地及び所有不動産の所在地がどこであるかによって、変わってきます。(常居所地及び所有不動産所在地がいずれも日本であれば、動産・不動産共に日本法適用になる。)

また、韓国籍の方の場合には常居所地や日本の不動産について、遺言によって日本法を適用するという旨の指定がなければ、韓国法が適用されます。

 

これに対して、かつて外国籍であったが、現在は帰化しており日本国籍を取得している方はどうなるでしょうか。

もちろん、日本人ですから、日本法(民法)が適用されます。

しかし、具体的な相続手続きをみてみると、出生時から日本国籍を有していた場合とは、異なる点があります。

 

(元外国人の方の相続の問題点)

一般に、遺言書を遺されなかった場合の相続手続きは、通常、①亡くなった方の相続人を特定し、②遺産分割協議等をし、③②の協議書に基づき各種財産の名義変更等をすることになります。(前述のとおり日本国籍でなければ、まず適用される国の法律の把握が必要です。)

この①~③の手順のうち、①については、亡くなった方の戸籍謄本を原則、出生~死亡時まで取得し、相続人を特定します。出生時から日本人であった方ならば、特に問題なくそれらの戸籍謄本を手に入れることができます(時たま戦災や災害で古い戸籍がない場合もあります)。

しかし、人生の途中で日本国籍を取得した場合には、帰化から死亡時までの戸籍しか存在しません。そのため、帰化以降の日本の戸籍謄本に加えて帰化前の国の書類を手配しなければなりません。例えば、元韓国現日本人の方であれば、帰化以降の日本の戸籍に加え、出生時から帰化までの昔の韓国の戸籍等を取得し翻訳するなどしなければなりません。

やはり、出生時から日本人であった場合と比較して、格段に労力や費用は余計に掛かってしまいます。

 

そこで、このような人生の途中で日本国籍を取得された方には、遺言書(特に公正証書遺言)の作成をお勧めします。メリットとして、以下の2点が挙げられます。

1、遺言書で漏れなく遺産を誰に相続させるか記しておけば、死後、相続人らがわざわざ帰化する前の国の書類を取得したり、翻訳をしたりする必要はありません。残された家族等は間違いなく大変楽です。

2、遺産分割協議をする必要がありません。そのため遺産分割協議で紛糾し家庭裁判所で話し合ったり、判断してもらわなければならない(いわゆる争続化の)リスクを可能な限り減らすことができます。さらに遺言書の中で遺言執行者まで定めておけば、原則として、遺言書通りに名義変更等をすればよいだけです。

このように、元外国人の方の相続の場合には、死後手続きの煩雑さを回避し、かつ争続化のリスクを減らすという意味で、遺言書(特に公正証書遺言)の作成がとても有効です。

このような事案について、大阪本町にて相談を希望される方(夜間相談や出張相談もOK)は、お気軽にメール・電話でお問い合わせくださいませ。

 

次→(会社設立登記において、印鑑証明書の氏名が英字(ピンイン)表記になっている場合

遺言の作成を強く勧める場合:第3回 離婚・再婚された方の相続

遺言の作成を強く勧める場合:第2回 子供がいない夫婦・子なし夫婦の相続)←前回

 

さて、遺言の作成を強く勧める場合として、次に取り上げるのは、「離婚・再婚された方の相続」についてです。

離婚・再婚された方が亡くなった場合、その相続人は、いったい誰になるのでしょうか。
図で示すと次の通りです(()内は法定相続分)。

 

[前夫(妻)との間に子がいない場合]

 

[前夫(妻)との間に子がいる場合]

 

このように、前夫(妻)との間に子がいる場合その親権をいずれが持とうが関係なく、前夫(妻)との間の子は相続人となります。

 

そして、前夫(妻)との間に子がいる場合で、遺言書がなくかつ、法定相続分通りで相続をしたくない場合、死亡時点の配偶者・その間の子 及び 前夫(妻)との間の子 で遺産分割協議をすることになります。

 

ではこの場合、どのような問題が想定できるでしょうか。

【遺産分割協議を行うために】
遺産分割協議を行うためには、法律上の相続人を特定しなければなりません。
その上で、実際に連絡をし、遺産をどのように分割するのか協議をしなければなりません。

死亡時点の配偶者・その間の子及び前夫(妻)との間の子が、連絡先を知っているような間柄ならば別ですが、疎遠であるか全く面識もないことも珍しくないと思います。
そうだとすると、連絡先を知ることも困難ですし、なんとか住所を突き止めても実際に連絡をつけて遺産分割協議をすることは簡単ではないことが容易に想像できます。

※他の相続人の連絡先を知る方法:戸籍を辿り戸籍附票から現在の住所を知ることはできます。相続が発生していれば他の相続人はもちろん取得できます。ただ、戸籍を読み慣れていないと取得は困難であると思います。ですから、この場合、専門家を活用する方がよいでしょう。

 

【前夫(妻)との間の子が自身の法定相続分を請求】
なんとか、戸籍ベースで相続人を特定し、連絡もし、遺産分割協議をすることができる状態になったとします。
では、すんなりまとまるでしょうか。もちろんその場合もあるとは思います。
しかし、上記の通り、前夫(妻)との間の子 も 死亡時点の配偶者との間の子 も等しく  であることには違いありませんので、同一の法定相続分が民法に定められています。
ということは、例えば、前夫(妻)との間の子が自身の法定相続分を遺産分割協議の中で請求することは当然あり得ます。
これは、親権が前夫(妻)側にあろうが、死亡前何十年と会っていなかろうが、変わりません。
このような場合に、その請求された法定相続分を満たすことのできる自宅以外の財産(預貯金、現金等)があれば良いのですが、めぼしい財産が自宅だけであるとすると、それを換価しなければならないこともあります。

 

【遺産分割調停・審判】
また、仮に遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所で協議や判断をしてもらうことになるかもしれません。
そうなれば、時間・費用共にそれなりに掛かることになるはずです。

 

しかし、遺言(特に公正証書遺言)があれば、

 

死後、遺産分割協議は、不要です。
よって、遺産分割協議で揉めることはありません。

さらに、前夫(妻)との子に法定相続分(上記の通り)を相続させたくない場合や反対にいくらか相続させたい場合には、それを遺言書に定めておくことができ、併せて遺言執行者を定めておけば、スムーズに死後遺言書通りの各種相続手続き(不動産の名義変更、預貯金の解約等)ができます。

この遺言執行者として専門家を定めておけば、例えば、前夫(妻)との間の子 と 死亡時点の配偶者・その間の子とが、連絡することなく死後、遺言書通りの各種相続手続きができます。
離婚・再婚された方の中には、心情的に連絡をさせたくないという方もいるかもしれません。

 

 

※公正証書遺言と自筆証書遺言の差異については、ホームページ内「相続・遺言作成について」の記載を参考にしてください。

※私は自筆証書遺言は、全くお勧めしません(揉める元であり、死後手続きがより煩雑になります)。

※前夫(妻)との子に全く遺産を相続させないとする遺言書を作成しても、その者からの遺留分の請求は考えられます。もっとも、遺留分相当額だけは相続させるという内容の遺言書を作成すればその恐れもなくなります。

 

このような事案について、大阪本町にて相談を希望される方(夜間相談や出張相談もOK)は、お気軽にメール・電話でお問い合わせくださいませ。

次回→(遺言の作成を強く勧める場合:第4回 元外国人の方の相続

遺言の作成を強く勧める場合:第2回 子供がいない夫婦・子なし夫婦の相続

遺言の作成を強く勧める場合:第1回 内縁関係・事実婚の相続)←前回

 

さて、遺言の作成を強く勧める場合として、次に取り上げるのは、「子供がいない夫婦・子なし夫婦の相続」についてです。

子のいない夫婦・子なし夫婦の一方が亡くなった場合、その相続人は、配偶者と直系尊属か、配偶者と兄弟姉妹になります。図で示すと次の通りです(カッコ内は法定相続分)。

 

≪配偶者と直系尊属≫

子がおらず、直系尊属が存命の場合

※法定相続分は、配偶者3分の2及び直系尊属全員で3分の1

 

 

 

 

≪配偶者と兄弟姉妹≫

子がおらず、直系尊属も既に死亡している場合

※法定相続分は、配偶者4分の3及び兄弟姉妹全員で4分の1

 

 

 

そして、これら子供がいない夫婦・子なし夫婦の相続の場合、遺言書がなくかつ、法定相続分通りで相続をしたくない場合、配偶者と直系尊属または、配偶者と兄弟姉妹で遺産分割協議をすることになります。
ではこの場合、どのような問題が想定できるでしょうか。

 

【遺産分割協議がまとまらない可能性】
協議がうまくまとまれば、よいのですが、配偶者と直系尊属や、配偶者と兄弟姉妹は、いわゆる血の繋がりがない間柄です。
遺産分割協議がまとまらないことも十分あり得ます。その場合解決するには、家庭裁判所での遺産分割調停或いは審判を経なければならず、仮に決着しても、親族の関係は険悪な状態が続くでしょう。

 

【配偶者以外の法定相続分をどうするか】
また、そこまで発展せずとも、直系尊属や兄弟姉妹がそれぞれの法定相続分を遺産分割協議の中で求めてくることも当然あるでしょう。その際に、亡くなった方名義の自宅以外に直系尊属や兄弟姉妹の法定相続分相当の預貯金があれば別ですが、めぼしい遺産が自宅だけということもあると思います。そうだとすると、自宅を換価し現金化するしか、直系尊属や兄弟姉妹の法定相続分を満たす方法がないということもあり得ます(生存配偶者の個人財産で直系尊属や兄弟姉妹の法定相続分を満たすとう方法もあります)。

 

【協議すらできないことも】
あるいは、そもそも疎遠で、連絡をすることが困難ということもあり得ます。まず遺産分割協議をする前提として、連絡をつけなければなりません。全く所在を知らない相続人がいる場合、調べることはかなり大変です。
(一般に戸籍・戸籍附票を辿っていくことで、現在の住所を調べることはできます。しかし、戸籍を読み慣れていなければ、大変な労力を掛けることになるでしょう。その場合、専門家を活用する方が総合的に考えよいでしょう。)

 

しかし、生前に遺言書(特に公正証書遺言)を作成しておけば、多くの場合、

遺産分割協議をする必要がなく、よって遺産分割協議により揉めることはありません。
遺産分割協議は、遺言書がなく、法定相続分での分割を望まないからこそするものだからです。

 

また、直系尊属や兄弟姉妹の法定相続分の請求についても、遺産分割協議をする場合に、主張され得るのであって、遺言があれば、遺産分割協議をする必要がないので法定相続分の請求もありません。せいぜい主張できるのは遺留分のみです。
ちなみに、兄弟姉妹には、民法上、遺留分はありません
よって、「すべての遺産を配偶者に相続させる」とする遺言書さえあれば、兄弟姉妹からの法定相続分の請求も遺留分の請求も、心配する必要はありません

 

さらに、法定相続人である直系尊属や兄弟姉妹の中に疎遠で連絡できない(或いはしたくない)人がいたとしても、公正証書遺言を作成する場合、遺言執行者を併せて定めることが一般的です。この遺言執行者として専門家を定めておけば、自らそのような人に連絡することなく、遺言書通りの各種相続手続き(不動産の名義変更、預貯金の解約等)がスムースにできます。

 

 

※公正証書遺言と自筆証書遺言の差異については、ホームページ内「相続・遺言作成について」の記載を参考にしてください。

※私は自筆証書遺言を、全くお勧めしません(揉める元であり、死後手続きがより煩雑になります)。

※配偶者と直系尊属が相続人になる場合、直系尊属には遺留分があり、それを請求される可能性はあります。もっとも、遺留分相当額だけは相続させるという内容の遺言書を作成すればその恐れもなくなります。

 

このような事案について、大阪本町にて相談を希望される方(夜間相談や出張相談もOK)は、お気軽にメール・電話でお問い合わせくださいませ。

 

次回→(遺言の作成を強く勧める場合:第3回 離婚・再婚された方の相続

遺言の作成を強く勧める場合:第1回 内縁関係・事実婚の相続

(遺言の作成を強く勧める場合:第0回 プロローグ)←前回

 

さて、遺言の作成を強く勧める場合として、最初に取り上げるのは、「内縁関係・事実婚の相続」についてです。

広く知られている通り、ある人が亡くなり相続が開始すると相続権を得る人(相続人)の順序や相続割合は民法に規定されています。

簡潔に述べれば相続人になるのは、

配偶者に加えて、次の者です。

①子がいれば: 子

②子がおらず直系尊属が存命なら: 直系尊属

③子がおらず直系尊属も先に死亡していれば: 兄弟姉妹
となります。

例えば、夫婦と子1人のご家族で、夫が死亡したならば相続人は、妻及び子となります。
また、夫婦に子がおらず、夫の両親も先に死亡している状況で、夫が死亡したならば相続人は、妻及び夫の兄弟姉妹となります。

 

このように、配偶者は常に相続人となりますので、仮に遺言書を遺さずとも、相続人として他の相続人と遺産分割協議をすることができます。もちろん、遺産分割協議がうまくまとまるかは、場合によるとは思いますが、少なくともその土俵には堂々と上がれます(もちろん遺留分もあります)。

しかし、ここでいう配偶者とは、法律上の夫婦ですから、内縁関係・事実婚の場合には、何十年連れ添ったとしても、互いに相手方死亡時に相続人にはなりえません。
(もっとも、死亡した配偶者の賃借権については、借地借家法で相続できる場合や判例において死亡した配偶者の賃借権を援用でき場合が示されています。・・・内縁・事実婚の配偶者の死亡により、途端に住むところを失うのはあまりに気の毒だから)(また、相続人となる人がいない場合には、特別縁故者という立場で遺産を貰うことができる場合もあります。)

ですから、もし、遺言を遺さずに内縁関係・事実婚の相続が開始してしまうと、その内縁・事実上の配偶者は遺産分割協議に参加することもできません。
例えば、子がおらず且つ直系尊属も先に死亡しているならば、上記③のとおり、亡くなった方の兄弟姉妹で遺産分割協議を行い、それに従い遺産を分割することになります。

 

しかし、遺言(特に公正証書遺言)で、誰にどの財産を相続(正確には遺贈)させるのかあらかじめで決めておけばこのような悲惨な事態を防ぐことができます。つまり、内縁・事実婚の配偶者に遺産を遺すことができるのです。
また公正証書遺言を作成する場合には、遺言執行者を併せて定めるでしょうから、死後の手続きもスムーズに進めることができます。
大切な人を失った直後にすることですから、できるだけ死後手続きを簡単に且つ確実にすることができるよう御膳立てしておくのは大変よいことでしょう。

もちろんこのことは、異性間、同性間で変わるものではないのでビアンカップルやゲイカップルの方々或いは、トランスジェンダーの方で性別の変更に至っておらず結婚ができない方とのカップルにも同じく有効です。

 

最後に、まとめると以下の通りになります。

「内縁関係・事実婚の相続」においては、その内縁・事実婚の配偶者は相続人にならないため、一切遺産を貰うことができない可能性が高い。

しかし、公正証書遺言を作成しておけば、確実に、内縁・事実婚の配偶者に遺産を遺すことができ、さらに遺言執行者を定めることで(法律上の配偶者でなくとも)死後の手続きを進めることができる。

さらに、この遺言執行者として専門家を定めておけば、自ら相続人に連絡することなく、遺言書通りの各種相続手続き(不動産の名義変更、預貯金の解約等)がスムースにできます

 

※公正証書遺言と自筆証書遺言の差異については、ホームページ内「相続・遺言作成について」の記載を参考にしてください。

※私は自筆証書遺言は、全くお勧めしません(揉める元であり、死後手続きがより煩雑になります)。

※相続人からの遺留分の請求だけはあり得ます。もっとも、遺留分相当額だけは相続させるという内容の遺言書を作成すればその恐れもなくなります。

 

このような事案について、大阪本町にて相談を希望される方(夜間相談や出張相談もOK)は、お気軽にメール・電話でお問い合わせくださいませ。

 

次回→(遺言の作成を強く勧める場合:第2回 子供がいない夫婦・子なし夫婦の相続

遺言の作成を強く勧める場合:第0回 プロローグ

(遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) 途中で相続人の一部が亡くなった場合編)←前回

 

将来、必ず訪れる相続に備えて、何らかの法的対策を講ずることは良いことと思います。
その対策として、遺言(特に、公正証書遺言)や家族信託或いは、生存贈与といったいくつかの手法があります。
これらの手法の中でも、公正証書遺言の作成は、最もメジャーで、かつ費用・労力対効果が優れていると思います。
(※家族信託や生存贈与も場面によっては、非常に有効なことがあります。)

とはいえ、「世の中のすべての人が公正証書遺言を作成するべきか?」と問われれば、そうではないかもしれません。ただ、いくつか特定の場合には、強く公正証書遺言の作成をお勧めします。

では、それはどのような場合なのか。
次回から司法書士香西が、強く公正証書遺言の作成をお勧めする場合と何故作成するべきなのかを解説していきたいと思います。

 

今回は、一般論として遺言、特に公正証書による遺言が何故、相続対策として有効なのかを簡単に確認します。

 

1、遺言を作成する方の遺産の分け方についての思いを遺言書に記せば、死後それを実現できます。※但し、遺留分を請求される可能性はあります。

・・・換言すれば、遺言がなければ、原則として相続人の協議によることになります。
この場合、元の財産の持ち主である亡くなった方の意思は関係ありません。

 

2、原則として、遺言があれば遺産分割協議をする必要がありません。

・・・遺言がなければ、原則として相続人の協議により遺産を分割することになりますが、前提として、相続人を戸籍ベースで特定できなければなりません。また、相続人全員が協議に参加できなければなりませんが、相続人同士の仲が悪いこと、疎遠であること、連絡がつかないことも考えられます。さらに協議をしたが場合によっては、紛糾し相続人間ではどうにも収拾がつかなくなり、家庭裁判所に行かねば解決できない事態にも発展するかもしれません。

 

3、公正証書遺言があれば、死後の手続きが非常にスムーズです。

・・・遺言がない場合、大まかに言えば、①戸籍の収拾による相続人の確定→②遺産分割協議→③協議書による各種手続き(不動産の名義の変更、預貯金口座の解約等)という流れになります。ただ、これは遺産分割協議がうまく成立した場合の話です。仮に、揉めることとなれば、先程述べた通り、可能性として家庭裁判所にいくことになるかもしれません。この場合には、1年以上の時間が掛かることも珍しくありません。もちろん親族の険悪な関係はそのままでしょう。
また、遺言者がご自身でお作りになった自筆証書遺言がある場合でも、実際に各種手続き(不動産の名義変更、預貯金口座の解約等)をしようとすると、①自筆証書遺言の家庭裁判所での検認手続き→場合によりますが②家裁での遺言執行者選任申立→③各種手続き(不動産の名義の変更、預貯金口座の解約等)という流れになります。
これに対し、公正証書遺言があれば、死後、速やかにその遺言書に基づき、各種手続き(不動産の名義変更、預貯金口座の解約等)が可能です(せいぜい数通の戸籍、住民票を取得するぐらいです)。

 

では、次回から司法書士香西が、強く公正証書遺言の作成をお勧めする場合と何故作成するべきなのかを解説します。

 

次回→(遺言の作成を強く勧める場合:第1回 内縁関係・事実婚の相続)

遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) 途中で相続人の一部が亡くなった場合編

(氏の変更許可(日本人が外国人配偶者の通称名に変更)について)←前回

 

昨年、秋ごろ、税理士の先生より遺産分割協議(書)について質問を頂きました。
どういう内容かというと、「知り合いのご家族において、まずお父様が亡くなり、その数カ月後にお母様が亡くなり、相続人が子供1人のみとなってしまった。この場合に、亡父名義の不動産については、一旦、お母様名義(単独名義)にしてから、子供の名義(単独名義)にすることはできないか」 というものでした。
趣旨としては、相続財産のうち価値の高い不動産については、相続税の配偶者特例(1億6000万円又は法定相続分まで、相続税非課税)を効かせたいがためのようです。

 

ということで、今回は【遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) 手続きの途中で相続人の一部が亡くなった場合編】について解説したいと思います。なお、相続人の一部が亡くなった時期ごとに、Q1~Q3の問題形式で解説します。

図示しますと次の通りです。

父の死亡     遺産分割協議成立  捺印完了

↓        ↓          ↓
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Q1       Q2         Q3
相続人の一部死亡  相続人の一部死亡    相続人の一部死亡

 

そもそも、ある人が亡くなりその人名義の不動産があれば、相続登記(不動産の名義変更手続き)をすることになります。
そして、遺言がなく法定相続分で不動産を引き継ぐのでなければ、基本的に相続人全員で、誰が引き継ぐか(一人でも複数人でもOK)について遺産分割協議をし、これに基づき遺産分割協議書を作成します。

この遺産分割協議書には、相続人全員が実印で捺印し、その印鑑証明書を1通ずつ用意しなければなりません。
(またこれらに加え、相続登記(不動産の名義変更手続き)をするには、法定相続人を確定させるための戸籍なども必要です。)
(印鑑証明書については、登記手続き上、厳密には登記申請人である相続人については不要とされています。)

 

では、
Q1、遺産分割協議を相続人全員でする前に、相続人の一部が亡くなった場合どうすればよいのでしょうか?
A1、この場合は、後に亡くなった人の相続人全員がその人に代わり遺産分割協議に参加して協議すればよいです(数次相続の遺産分割協議書作成)。

(具体例1)
先に亡くなった父名義の不動産について、父の相続人全員である、母、子1、子2が遺産分割協議をするべきところ、その協議前に母が亡くなった場合

この場合は、父の遺産(不動産)について、遺産分割協議をすることのできる地位を、母から母の相続人である子1、子2が引継いでいるので、子1と子2の二人の協議で、遺産分割協議をすることができます。
但し、その旨を遺産分割協議書に記載しておく必要があります。

(具体例2)
先に亡くなった父名義の不動産について、父の相続人全員である、母、子1、子2が遺産分割協議をするべきところ、その協議前に子2が亡くなった場合

 

この場合は、父の遺産(不動産)について、遺産分割協議をすることのできる地位を、子2から子2の相続人であるその妻、孫が引継いでいるので、子2の妻と孫の二人が子2の代わりに遺産分割協議に参加し協議をすることができます。
但し、その旨を遺産分割協議書に記載しておく必要があります。

 

Q2、遺産分割協議を相続人全員でしたが、遺産分割協議書を作成する前に、相続人の一部が亡くなった場合どうすればよいのでしょうか?
A2、相続人の一部が亡くなる前に相続人全員で遺産分割協議をしていたことについて、後に亡くなった人の相続人全員を含めその旨の証明書を作成すればよいです(遺産分割協議証明書の作成)。

(具体例1)
先に亡くなった父名義の不動産について、父の相続人全員である、母、子1、子2が遺産分割協議をしたのだが、その協議書作成前に母が亡くなった場合

この場合は、母の地位をその相続人である子1、子2が引継いでいるので、子1と子2の二人で証明書(実印+印鑑証明書)を作成すればよいです。

(具体例2)
先に亡くなった父名義の不動産について、父の相続人全員である、母、子1、子2が遺産分割協議をしたのだが、その協議書作成前に子2が亡くなった場合

この場合は、子2の地位をその相続人である妻、孫が引継いでいるので、子2の妻と孫の二人を含め、母、子1、子2の妻及び孫で証明書(実印+印鑑証明書)を作成すればよいです。

冒頭の、税理士の先生よりのご質問の件は、この(Q2)パターンです。
(父の相続人 兼 父の相続人である母の相続人)である子一人で、母が死亡する前に、「父名義の不動産につき母の単独名義とする」遺産分割協議が成立していた旨の遺産分割協議証明書を作成することになりました。

 

Q3、遺産分割協議を相続人全員でし、遺産分割協議書も作成し相続人全員で実印による捺印もしたのだが、印鑑証明書を取得する前に相続人の一部が亡くなった場合どうすればよいのでしょうか?
A3、遺産分割協議書が真正であることについて、後に亡くなった人の相続人全員を含め証明書を作成すればよいです(登記研究106号質疑応答、220号質疑応答)。

(具体例1)
先に亡くなった父名義の不動産について、父の相続人全員である、母、子1、子2が遺産分割協議をし遺産分割協議書を作成・実印により捺印したが、印鑑証明書を取得する前に母が亡くなった場合

この場合は、母の地位をその相続人である子1、子2が引継いでいるので、子1と子2の二人で遺産分割協議書が真正であることについて証明書(実印+印鑑証明書)を別途作成すればよいです。

(具体例2)
先に亡くなった父名義の不動産について、父の相続人全員である、母、子1、子2が遺産分割協議をし遺産分割協議書を作成・実印により捺印したが、印鑑証明書を取得する前に子2が亡くなった場合

この場合は、子2の地位をその相続人である妻、孫が引継いでいるので、子2の妻と孫の二人を含め、母、子1、子2の妻及び孫で遺産分割協議書が真正であることについて証明書(実印+印鑑証明書)を別途作成すればよいです。

 

 

 

次回→(遺言の作成を強く勧める場合:第0回 プロローグ)

氏(姓)の変更許可(日本人が外国人配偶者の通称名に変更)について

(遺言書への株式の記載方法について)←前

平成29年某日、知り合いの社長様の紹介で、氏(姓)を変えたいとする方からの相談を受けました。

何故、氏を変えたいかというと、配偶者の連れ子(日本国籍・就学前)と養子縁組により親子関係を形成したいところ、その配偶者が外国籍であり、当然には配偶者の氏を称する婚姻ができず、結果、仮にそのまま連れ子と養子縁組をすれば、その子の氏を養親たる自身の氏に合わせることになるため(民法810条本文)、先んじて、氏を配偶者の通称名である氏に変更したいとするものでした。

依頼者様としては、連れ子の親になりたいが就学前の子が、養子縁組に伴う氏の変更により混乱することを避けたい。また、親子三人の氏がバラバラになることを避けたいなどの思いがあったようです。

 

イメージとしては、次の通りです。

 

(現状)

 

 

 

 

 

甲:依頼者、日本国籍

A(乙):外国籍の配偶者、連れ子の親権者なお「A」は本名の氏で「(乙)」は通称名の氏とする

乙:A(乙)の連れ子、日本国籍、未就学児

 

(目標)

 

 

 

 

 

①依頼者は甲から乙に氏を変える(配偶者の通称名に変える)。
②依頼者と連れ子である乙は、A(乙)の同意を得て養子縁組をする(民法797条1項)
(なお民法798条但書から、乙は未成年者ながら養子縁組について家裁の許可不要。)

 

さて、このようなわけで、依頼者様の氏を配偶者の通称名の氏に変えねばならないわけですが、当初不勉強な私は、戸籍法107条2項に基づき婚姻から6ケ月以内に届出れば、外国籍の配偶者の称している氏に変更できるのではないか、と思ったわけです。
ところが、ここでいう「配偶者の称している氏」とは、いわゆる本名の姓(氏)であり、日本での通称名は、これに含まれないようです。

そのため、戸籍法107条1項による家裁の許可を得て、氏を配偶者の通称名へと変更することになりました。

なお確かに同条同項は、条文上「やむを得ない事由」を要件にしていますが、一部の類型では、比較的許可されることが多いようです。
そして、今回の配偶者の通称名への氏の変更もそんな許可されやすい類型のようです。(「近畿司法書士会連合会 新人研修5 352頁」参照)

 

次に、問題となることは、この氏の変更許可の射程に関することです。
どういうことかというと、この氏の変更許可の効果は、氏の変更許可申立をした者と同一戸籍内にいる者にも及ぶということです。
つまり、申立をし許可を得て役所に届出をすれば、氏の変更に伴って申立人のみの新戸籍が編成されるわけではなく、子が同籍している場合には、その子の氏も変えることになります(氏の変更による新戸籍編成について規定した戸籍法20条の2 1項2項は、同法107条1項を除いて規定している。107条4項準用からの1項は除く。)

ちなみに、前述の戸籍法107条2項の届出の場合には、その効果は同籍の子には及ばず、新戸籍が編成されます。結果、氏を変更した者とその子は、戸籍と氏を異にすることになります(戸籍法20条の2 1項)。但し、入籍届により、その後戸籍と氏を同一にすることは可能です(民法791条2項、戸籍法98条)。

そして、この件では、氏を変更する依頼者様の戸籍内には、前の配偶者との間の子がいました。
もし15才以上であれば、申立書及び戸籍等に加え、自身の氏が変更されることについての同意書が必要となりますが、15歳未満でした。
ですから、その子からの同意書は必要ありません。
しかし、ではその氏を変えられてしまう子に関しては何も必要ないのでしょうか。
少し、疑問が残りつつも、家裁に申立書及び標準的な申立添付書類を作成・用意し、申立がなされました。

案の定、家裁より申立人の戸籍謄本内にいる子について質問があり、最終的には、その子の親権者(申立人の元配偶者)の理解・同意があることを確かめるため、家裁より、その方へお手紙(当該申立が許可されることで、親権に服するあなたの子の氏が変わることを理解しているか)が送付されることになりました。

依頼者はその点をしっかり事前に説明し同意してもらっておられたので、特に問題なく、家裁への回答がなされたようです。

 

その後、申立人への家裁での審尋があり、これも無事何事もなく終わりました。
なお、依頼者によれば、借金はしていないか問われたそうです。
おそらくブラックリスト(個人信用情報)に登録されている人が、新たな借り入れ等のために氏を変えようとしているのではないか念のため確認したのでしょうか。

 

なにはともあれ無事、

主文
「1 申立人の氏を「〇〇」と変更することを許可する。」
「2 手続費用は申立人の負担とする。」

 

とする審判書謄本を得、2週間後確定証明書を受取りました。

 

速やかに、関係者とともに最寄りの区役所に赴き、①氏の変更と②養子縁組の手続きを終えました。

その後、氏の変更に伴う各種手続きがなされました。
具体的には以下のような手続きが必要になります。
※この件で依頼者が全てをやったという意味ではありません。また更新があるものはその際にやることもできるかもしれません。

・印鑑登録
・運転免許証変更
・不動産の名義
・役員の氏名変更登記
・賃貸契約について貸主への連絡
・預貯金口座の変更(通帳、キャッシュカード)
・クレジットカード
・車の名義変更
・自賠責の変更
・パスポート
・年金手帳
・ガス、水道、電気
・携帯電話
など

 

今回紹介する本は、菱田泰典『相続人確定のための戸籍の見方・揃え方』近代セールス社です。この本は、主に相続業務に欠かせない情報満載です。特に、旧法戸籍及び現行戸籍それぞれの新戸籍編成・消除原因が網羅的に記載されたページ(70頁以下)は、当初とても勉強になりました。また、今回の件のように、相続業務以外の場面でも役立ちます(例えば、外国籍の者と婚姻した場合の戸籍の記載例など特異な戸籍記載例も多いです)これから戸籍を読むことが求められる方は、読んでみてはどうでしょうか。

 

さて次回は 遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) について書きたいと思います。

次→(遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) 途中で相続人の一部が亡くなった場合編)

 

遺言書への株式の記載方法について

(①定款PDFファイルの名前について、②印鑑証明書と在留期間について、③解散登記から10年による閉鎖(商業登記規則81条第1項による登記記録閉鎖)からの復活について)←前

11月某日、ホームページをご覧になった方より、電話にて遺言書の作成についてご質問を受けました。

その内容は、「株式をいくらか有しているが、日頃取引をするため銘柄や株数について変動する。このような状態でも遺言書を書くことはできるか。」

(要するに、どのように株式を特定するか)という、ものでした。

私は、もちろん可能です。とお答えし、具体的記載方法について多少説明をし、一応納得してもらえたのではないかと思います。

 

そこで、今回は、株式が相続財産に含まれる場合の遺言書への記載の仕方について、場合ごとに例示しようと思います。
(そもそも、このサイトは相続遺言専門サイトですし笑)

まず、上場会社の場合ですと、①「遺言者名義の〇〇株式会社の普通株式」などのように会社名及び株式の種類等で特定するか、

②「〇〇証券〇〇支店における遺言者名義の株式」のように口座のある証券会社により特定することが考えられます。

他方で、非上場会社の場合であれば、①「遺言者名義の〇〇株式会社の普通株式」の記載の仕方による他ないと思います。

 

具体的記載例としては、次のとおりです。

①の場合

〇〇株式会社 普通株式 (〇〇株)

※( )は作成後変動がない場合記載してもよいです。

 

②の場合

口座開設者   〇〇証券株式会社(〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号)
加入者     甲野太郎
口座番号    〇〇〇
(銘柄      〇〇株式会社普通株式)
(銘柄コード番号 〇〇〇)
(数量      〇〇株)

※( )は作成後変動がない場合記載してもよいです。
預貯金口座も同様で、銀行名、支店、預金の種類及び口座番号を記載することは多いですが、遺言書作成後に変動することが予想される残額については、あまり記載しません。

 

なお、上場株式か非上場株式かによって、作成後亡くなり遺言を執行する際、その方法も大きく異なります。

 

次回は、氏の変更許可について、書きます。

 

→次(氏(姓)の変更許可(日本人が外国人配偶者の通称名に変更)について)