ブログ

地縁団体(権利能力なき社団)について

現在非居住者の中国人が、日本において居住者であったころに購入した不動産を売却する場合について)←前

平成30年秋頃、九州地方(都会でない地域)の土地建物について、相続登記のご依頼を受けました。
当初、相続登記の対象になると思われた被相続人名義の不動産は、大きく分けて2グループあると考えていました。
即ち、被相続人単独所有の土地建物 及び 被相続人を含め119人共有の30数筆の山林等です。
当然いずれも相続登記ができるものと思い込んでいました。

しかし、119人共有名義の不動産について、その一部である堤・公衆用道路などの此価格や被相続人の住所の沿革に関する確認のため管轄法務局に問い合わせてみると、回答に代わり、次のようなことを言われました。

 

「地縁団体のものではないか?」

「(被相続人の)親族や役所に確認してはどうか?」

「相続登記するのですか?」

 

この時点ではまだ、どういうことかはっきり理解できていませんでしたが、何か見当違いな問合せをしてしまったのだろうことは理解したので、よく検討する旨を伝え、話を終えました。

そこからしばし考え、「共有名義」でかつ「相続登記不可」ということからピンと来ました。

そうです。権利能力なき社団です。

結局、役所に確認してみると法務局の言う通りでした。

 

というわけで、今回は、登記簿を見て、「これらの土地は、地縁団体等のもので権利能力なき社団であり、相続登記は出来ないのではないか」と、その可能性を全く疑えなかった自身への戒めとして、権利能力なき社団についてあれこれ確認・勉強してみようと思います。

 

そもそも、権利能力なき社団とは、一般社団法人と同様の実体がありながら、法人格のない団体をいいます。
例えば、同窓会、自治会や地縁団体などです。

その要件は、①団体としての組織を備えていること②意思決定に多数決の原則があること③構成員の変更があっても団体を存続できること④代表選任の方法、総会の運営、財産管理その他団体として主要な点が確定していること、です。

そして、その名のとおり権利能力(=権利義務の帰属主体になりえる能力)がありません。
ですから、団体自身に権利・義務を帰属させることはできません。
例えば、地縁団体に土地の所有権を帰属させることはできないのです。
では、その土地を含め権利や義務は、いったい誰に帰属するのかというと、構成員全員に共同して帰属し、その共同所有形態は総有と解されているようです。
そして、総有という共同所有形態であるために、各構成員に持分を観念することはできないのです(最判昭32.11.14参照)。

 

次に、そのような権利能力なき社団の不動産は、どのように登記すればよいのでしょうか。

まず、権利能力なき社団の名義で登記することはできません。
例えば、「〇〇町自治会」などの名義では登記できません。
これは、その団体について、資格証明情報(会社法人等番号)・印鑑証明書などの公証できるものがなく、申請人の存在や申請意思の確認ができないためです。
また、虚偽登記の誘発防止のため、団体の肩書付き代表者名での登記もできません。
例えば、「○○町自治会 代表甲野太郎」などと登記はできません(最判昭47.6.2参照、昭36.7.21民三625号回答)。

では、どうするかというと、当該団体の規約に基づき代表者の個人名義(最判昭47.6.2参照、昭28.12.24民甲2523号回答)または、そのような規約がなければ構成員全員の共有名義(最判平6.5.31参照、昭28.12.24民甲2523号回答)ならば登記することができます。

まさに今回の件は、構成員全員の共有名義です。
そして、実体的には、総有という共同所有形態であり、(登記簿上の表記は別として)各構成員に持分を観念できないため、売買や相続といった原因でその持分の移転登記は認められないわけです。

 

しかし、このような登記に仕方には、問題もあります。

実際に私がそうであったように個人の財産と勘違いし、相続・売買による移転登記或いは差押え登記がなされてしまう恐れがあります。

 

そこで、平成3年の地方自治法の一部を改正する法律により、認可地縁団体の認可申請手続や権利義務等が定められました。

これにより、認可地縁団体となれば、その規約に定める目的の範囲内で権利義務の帰属主体となり、その不動産を所有することがその認可地縁団体の目的にかなうものであれば、直接登記名義人になることもできることとなりました。

では、認可地縁団体になるためには、どのような要件がいるのかというと、

地縁による団体(=町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体)が、以下の①~④を満たす必要があるようです(自治法260条の2第1項)。

①その区域内の住民相互の連絡、環境の整備、集会施設の維持管理等良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うを目的とし、現にその活動を行っていると認められること

②その区域が、住民にとって客観的に明らかなものとして定められていること

③その区域に住所を有するすべての個人は、構成員となることができるものとし、その相当数の者が現に構成員となっていること

④規約を定めていること

です。

 

これらを満たし認可地縁団体となれば、上記のとおり登記名義人になることができますので、権利能力なき社団から認可地縁団体へ、認可地縁団体を登記権利者、代表者または登記名義人全員を登記義務者とし、日付を認可のあった日、原因を委任の終了として、共同申請で所有権移転登記ができます。

しかし、何十人或いは百人単位で共有登記がなされている場合、事実上このような移転登記はできないことが多いようです。

それは、名義人の中で相続が複数発生しており相続人を確定することが困難であったり、所在不明者が含まれていたりすることもあるためです。

 

そこで、自治法に認可地縁団体が所有する不動産に係る不登法の特例が設けられました。

これは、一定の要件を満たし、市町村長による公告を経て、「証する情報(公告したこと、及び登記関係者等が期間内に異議を述べなかったことを証する情報)」を取得し、これを権利能力なき社団(共有名義)から認可地縁団体への移転登記の添付情報とすれば、単独申請で名義を変えることができるというものです。

 

もちろん今回の件ではここまでするという話にはなっておりませんが、いずれこのような登記申請にも関わってみたいです。

 

久々ですが最後に、本日紹介する本は、
後藤浩平(平成28年)『認可地縁団体・記名共有地をめぐる実務Q&A -認可申請手続と不動産登記手続-』日本加除出版.
です。この本を読めば、権利能力なき社団のことから認可地縁団体のこと(認可と登記)がよく分かります。

試験時代はともかく、実務では権利能力なき社団は初めてでしたので、今回こういう案件に出会え、勉強する機会ができてよかったと思います。

 

次→()