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氏(姓)の変更許可(日本人が外国人配偶者の通称名に変更)について

(遺言書への株式の記載方法について)←前

平成29年某日、知り合いの社長様の紹介で、氏(姓)を変えたいとする方からの相談を受けました。

何故、氏を変えたいかというと、配偶者の連れ子(日本国籍・就学前)と養子縁組により親子関係を形成したいところ、その配偶者が外国籍であり、当然には配偶者の氏を称する婚姻ができず、結果、仮にそのまま連れ子と養子縁組をすれば、その子の氏を養親たる自身の氏に合わせることになるため(民法810条本文)、先んじて、氏を配偶者の通称名である氏に変更したいとするものでした。

依頼者様としては、連れ子の親になりたいが就学前の子が、養子縁組に伴う氏の変更により混乱することを避けたい。また、親子三人の氏がバラバラになることを避けたいなどの思いがあったようです。

 

イメージとしては、次の通りです。

 

(現状)

 

 

 

 

 

甲:依頼者、日本国籍

A(乙):外国籍の配偶者、連れ子の親権者なお「A」は本名の氏で「(乙)」は通称名の氏とする

乙:A(乙)の連れ子、日本国籍、未就学児

 

(目標)

 

 

 

 

 

①依頼者は甲から乙に氏を変える(配偶者の通称名に変える)。
②依頼者と連れ子である乙は、A(乙)の同意を得て養子縁組をする(民法797条1項)
(なお民法798条但書から、乙は未成年者ながら養子縁組について家裁の許可不要。)

 

さて、このようなわけで、依頼者様の氏を配偶者の通称名の氏に変えねばならないわけですが、当初不勉強な私は、戸籍法107条2項に基づき婚姻から6ケ月以内に届出れば、外国籍の配偶者の称している氏に変更できるのではないか、と思ったわけです。
ところが、ここでいう「配偶者の称している氏」とは、いわゆる本名の姓(氏)であり、日本での通称名は、これに含まれないようです。

そのため、戸籍法107条1項による家裁の許可を得て、氏を配偶者の通称名へと変更することになりました。

なお確かに同条同項は、条文上「やむを得ない事由」を要件にしていますが、一部の類型では、比較的許可されることが多いようです。
そして、今回の配偶者の通称名への氏の変更もそんな許可されやすい類型のようです。(「近畿司法書士会連合会 新人研修5 352頁」参照)

 

次に、問題となることは、この氏の変更許可の射程に関することです。
どういうことかというと、この氏の変更許可の効果は、氏の変更許可申立をした者と同一戸籍内にいる者にも及ぶということです。
つまり、申立をし許可を得て役所に届出をすれば、氏の変更に伴って申立人のみの新戸籍が編成されるわけではなく、子が同籍している場合には、その子の氏も変えることになります(氏の変更による新戸籍編成について規定した戸籍法20条の2 1項2項は、同法107条1項を除いて規定している。107条4項準用からの1項は除く。)

ちなみに、前述の戸籍法107条2項の届出の場合には、その効果は同籍の子には及ばず、新戸籍が編成されます。結果、氏を変更した者とその子は、戸籍と氏を異にすることになります(戸籍法20条の2 1項)。但し、入籍届により、その後戸籍と氏を同一にすることは可能です(民法791条2項、戸籍法98条)。

そして、この件では、氏を変更する依頼者様の戸籍内には、前の配偶者との間の子がいました。
もし15才以上であれば、申立書及び戸籍等に加え、自身の氏が変更されることについての同意書が必要となりますが、15歳未満でした。
ですから、その子からの同意書は必要ありません。
しかし、ではその氏を変えられてしまう子に関しては何も必要ないのでしょうか。
少し、疑問が残りつつも、家裁に申立書及び標準的な申立添付書類を作成・用意し、申立がなされました。

案の定、家裁より申立人の戸籍謄本内にいる子について質問があり、最終的には、その子の親権者(申立人の元配偶者)の理解・同意があることを確かめるため、家裁より、その方へお手紙(当該申立が許可されることで、親権に服するあなたの子の氏が変わることを理解しているか)が送付されることになりました。

依頼者はその点をしっかり事前に説明し同意してもらっておられたので、特に問題なく、家裁への回答がなされたようです。

 

その後、申立人への家裁での審尋があり、これも無事何事もなく終わりました。
なお、依頼者によれば、借金はしていないか問われたそうです。
おそらくブラックリスト(個人信用情報)に登録されている人が、新たな借り入れ等のために氏を変えようとしているのではないか念のため確認したのでしょうか。

 

なにはともあれ無事、

主文
「1 申立人の氏を「〇〇」と変更することを許可する。」
「2 手続費用は申立人の負担とする。」

 

とする審判書謄本を得、2週間後確定証明書を受取りました。

 

速やかに、関係者とともに最寄りの区役所に赴き、①氏の変更と②養子縁組の手続きを終えました。

その後、氏の変更に伴う各種手続きがなされました。
具体的には以下のような手続きが必要になります。
※この件で依頼者が全てをやったという意味ではありません。また更新があるものはその際にやることもできるかもしれません。

・印鑑登録
・運転免許証変更
・不動産の名義
・役員の氏名変更登記
・賃貸契約について貸主への連絡
・預貯金口座の変更(通帳、キャッシュカード)
・クレジットカード
・車の名義変更
・自賠責の変更
・パスポート
・年金手帳
・ガス、水道、電気
・携帯電話
など

 

今回紹介する本は、菱田泰典『相続人確定のための戸籍の見方・揃え方』近代セールス社です。この本は、主に相続業務に欠かせない情報満載です。特に、旧法戸籍及び現行戸籍それぞれの新戸籍編成・消除原因が網羅的に記載されたページ(70頁以下)は、当初とても勉強になりました。また、今回の件のように、相続業務以外の場面でも役立ちます(例えば、外国籍の者と婚姻した場合の戸籍の記載例など特異な戸籍記載例も多いです)これから戸籍を読むことが求められる方は、読んでみてはどうでしょうか。

 

さて次回は 遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) について書きたいと思います。

次→(遺産分割協議(書)と相続登記(不動産の名義変更) 途中で相続人の一部が亡くなった場合編)

 

遺言書への株式の記載方法について

(①定款PDFファイルの名前について、②印鑑証明書と在留期間について、③解散登記から10年による閉鎖(商業登記規則81条第1項による登記記録閉鎖)からの復活について)←前

11月某日、ホームページをご覧になった方より、電話にて遺言書の作成についてご質問を受けました。

その内容は、「株式をいくらか有しているが、日頃取引をするため銘柄や株数について変動する。このような状態でも遺言書を書くことはできるか。」

(要するに、どのように株式を特定するか)という、ものでした。

私は、もちろん可能です。とお答えし、具体的記載方法について多少説明をし、一応納得してもらえたのではないかと思います。

 

そこで、今回は、株式が相続財産に含まれる場合の遺言書への記載の仕方について、場合ごとに例示しようと思います。
(そもそも、このサイトは相続遺言専門サイトですし笑)

まず、上場会社の場合ですと、①「遺言者名義の〇〇株式会社の普通株式」などのように会社名及び株式の種類等で特定するか、

②「〇〇証券〇〇支店における遺言者名義の株式」のように口座のある証券会社により特定することが考えられます。

他方で、非上場会社の場合であれば、①「遺言者名義の〇〇株式会社の普通株式」の記載の仕方による他ないと思います。

 

具体的記載例としては、次のとおりです。

①の場合

〇〇株式会社 普通株式 (〇〇株)

※( )は作成後変動がない場合記載してもよいです。

 

②の場合

口座開設者   〇〇証券株式会社(〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号)
加入者     甲野太郎
口座番号    〇〇〇
(銘柄      〇〇株式会社普通株式)
(銘柄コード番号 〇〇〇)
(数量      〇〇株)

※( )は作成後変動がない場合記載してもよいです。
預貯金口座も同様で、銀行名、支店、預金の種類及び口座番号を記載することは多いですが、遺言書作成後に変動することが予想される残額については、あまり記載しません。

 

なお、上場株式か非上場株式かによって、作成後亡くなり遺言を執行する際、その方法も大きく異なります。

 

次回は、氏の変更許可について、書きます。

 

→次(氏(姓)の変更許可(日本人が外国人配偶者の通称名に変更)について)