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渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)

(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について)←前

平成29年5月中旬、買主を外国人個人(非居住者:中長期以上の在留者でない)とする不動産取引(土地・建物:一戸建て)に係る登記案件を受任しました。

内容的には、抹消→移転 のみ(現金決済)でした。

もちろん、非居住者ですので、本邦の市区町村に住民登録はありません。

そこで、本国で宣誓供述書を作成してもらい、翻訳文をつける必要がありますが、この方の場合は、宣誓供述書の後半の頁で日本語訳がついていました。
※本国に住民登録制度があり、住所証明情報として適格性があればそれに翻訳文をつける方法でもいいとは思いますが、この方の国にはありません。

また、早い段階で、この宣誓供述書の写しを確認できたので、ここまでは特に問題はなにもありませんでした。

 

次に、外為法上の届出(資本取引)が必要か、また納税管理人が必要か、どうか知りたかったので、多分必要だろうと思いつつ、購入目的を業者に聞いたところ、買主は日本に移住し、会社を創業する予定であり、そのために購入するとのことでした。

ということは、ご自身の居住用ですから、外為法上の届出も、納税管理人も不要になるはずです。
※外為法上の届出:外為報告省令5条2項10号イ、納税管理人:国税通則法117条1項参照

 

しかし、今度は、住宅用家屋証明による減税の適否 及び 適用されるとして具体的に何が添付書類として必要か が問題になります。

租税特別措置法には、国籍要件はないので、日本人でないことのみで適用されないことはないはずですが(実際、永住者の方で住宅ローンを組んで減税適用ありの決済もたまにありますし)、非居住者であっても、自己の居住用に不動産を購入するならば、適用されるのでしょうか。

少し調べましたが、本当に居住用で不動産を購入するのであれば、適用されるようでした(日本加除出版 渉外不動産取引に関する法律と税金 170頁)。

では、市税事務所への添付書面として具体的に何が、一般的な場合に加えて必要なのでしょうか。

管轄の市税事務所と何度か電話でやり取りしたところ、本当に今回の購入目的が居住用であることが確からしいことの分かる書面が必要とのことでした。
(つまり単なる日本での別荘・セカンドハウスではないことが分かるもの)

ということで、申請書及び証明書と共に、以下の書面を添付することにしました。

・申立書
・登記情報(照会番号付き)
・登記原因証明情報
・宣誓供述書:住民票の代わり
・同居親族からの申立書
行政書士先生の依頼確認書(在留資格認定証明書申請(在留資格:「経営・管理」)の依頼を受けていること及びその申請準備中であることにつき)

念のため、担当市税事務所に確認を求め、上記で過不足ないとの回答でしたので、決済当日を迎え、決済後何事もなくその市税事務所で減税証明書を取得し、法務局に向かい登記申請しました。

※あくまで一例であり、管轄の市税事務所・担当者或いは、取引当事者の状況により判断が変わることがあり得ます。

 

 

この登記手続きで感じたことは、常に固定概念?を疑った方がいいなということです。

私は、なぜか、非居住者の外国人が買主になる場合には、減税の適用がないものとばかり思い込んでいた節がありました。

「もしかしたら、減税の適用があるのでは?」と思ったのは、その少し前に、同じ国の方(永住資格あり)が買主となる減税の適用のある登記手続きを実際にやっていたためです。

よい教訓になりました。

 

次回は、渉外取引②か、遺産分割協議について、書きたいと思います。

→次(渉外取引②非居者による不動産取引(購入)に係る外為法上の届出と納税管理人の申告について

遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について

前(四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について)

平成29年5月頃、大阪府下のとある市の不動産(土地・建物)につきまして、公正証書遺言に基づく相続登記(不動産の名義変更)案件を受任しました。

その公正証書遺言の内容は、いわゆる遺産分割方法の指定(特定の相続人に、特定の相続財産を「相続させる」旨の文言がある)でした。

単にこれだけですと、よくあることなのですが、問題は、複数ある不動産のうち土地の一部(畑)について、遺言書の内容とは異なる相続人が取得したいとの相続人の方々の希望があったことでした。

つまり、遺産分割方法の指定により記載された遺言に反する遺産分割協議が(実体法的に、また登記手続法的に)できるかという問題です。

そもそも、この「相続させる」旨の遺言の効果については、

遺産分割方法指定説(民法908条)

:現物分割、価格分割、代償分割のうち、いずれの分割方法によるかを遺言によって指定しているとするもの

遺贈説(民法964条)

:そのまま

遺産分割効果説

:遺産分割の方法の指定であることを前提としつつ、その指定に遺産分割の効果を認めるとするもの

の3説があり、

いわゆる香川判決(最判平成3年4月19日)において、遺産分割効果説が採られました。

即ち、
「右の「相続させる」趣旨の遺言は、正に同条(民法908条)にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり、他の共同相続人も右の遺言に拘束され、これと異なる遺産分割の協議、さらには審判もなし得ない」
また、
「何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される」
と判しました。

またこれを受けて、
「特定の不動産を「長男A及び二男Bに各2分の1の持分により相続させる」旨の遺言書とともに、A持分3分の1、B持分3分の2とするA及びB作成に係る遺産分割協議書を添付して、当該持分による相続登記の申請はすることができない」との登記研究546-152も出されました。

理由としては、
「相続させる」旨の遺言があり、遺言者が死亡した場合、直ちに、その内容の遺産分割協議が完了した状態になると考えるためです。
(通常、相続が開始すると相続財産は、共同相続人間で、過渡的・浮動的な共有(または合有とする考えがある)となり、これを遺産分割協議等により相続時に遡及して権利帰属を確定させますが、
「相続させる」旨の遺言がある場合には、相続開始と同時に、遺産の権利帰属が確定してしまうこととなります。)

ですから、このような場合、遺言書通りに「相続」を原因とする登記をし、次に共有物分割・売買等により、相続人らの望む権利関係をつくることになるはずです。

 

しかし、さいたま地方裁判所平成14年2月7日判決 によれば、
「(香川判決(最判平成3年4月19日)を踏まえた上で)しかしながら,このような 遺言をする被相続人(遺言者)の通常の意思は,相続をめぐって相続人間に無用な紛争が生ずることを避けることにあるから,これと異なる内容の遺産分割が全相続人に よって協議されたとしても,直ちに被相続人の意思に反するとはいえない。
被相続人が遺言でこれと異なる遺産分割を禁じている等の事情があれば格別,そうでなければ, 被相続人による拘束を全相続人にまで及ぼす必要はなく,むしろ全相続人の意思が一致するなら,遺産を承継する当事者たる相続人間の意思を尊重することが妥当である。
法的には,一旦は遺言内容に沿った遺産の帰属が決まるものではあるが,このような遺産分割は,相続人間における当該遺産の贈与や交換を含む混合契約と解することが 可能であるし,その効果についても通常の遺産分割と同様の取り扱いを認めることが実態に即して簡明である。
また従前から遺言があっても,全相続人によってこれと異 なる遺産分割協議は実際に多く行われていたのであり,ただ事案によって遺産分割協議が難航している実状もあることから,前記判例は,その迅速で妥当な紛争解決を図 るという趣旨から,これを不要としたのであって,相続人間において,遺言と異なる遺産分割をすることが一切できず,その遺産分割を無効とする趣旨まで包含していると解することはできないというべきである。」
としています。

また、この判決と同様の結論の下級審判断もいくつかあり、また同様の結論を説く書籍も普通にあります。

 

ということで、管轄法務局に事前相談することとしました。

相談票(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議と登記 相談票)を流し、後日電話がありました。

色々と、法務局の方でも調べて頂いたようでしたが、

回答は、香川判決・登記研究546-152を前提にするもので、

①遺言による相続登記 ②売買・贈与による移転登記 をするべしとするものでした。

もっとも、他の法務局他の担当者でも必ず同じ結論かは分かりません。

(ところで、この件は、不動産(土地)が農地であり、この農地の帰属を望む相続人の方が、遺言の文言では共有者にならない方ですので、持分放棄ができず、農地法3条の許可が必要になってしまいます。)

なお、同じような場面で、法務局にこのような遺言書を添付せず、相続人方の望む内容の遺産分割協議書を添付すれば、問題なく登記は「相続」を原因として、通るとは思いますが、それはするべきとは思いませんし(遺言書、遺産分割協議書の両方を添付して申請するならばよいですが)、

悩ましいです。

 

ただ、言えることは、遺言書作成に関わらせてもらう場合には、

遺言者の意思はもちろんとして、税務面に加え、この点も(「遺産分割を禁じる」旨を入れるかも含め)考慮するべきであると感じました。

 

最後に、本日紹介する本は、

青木登(平成26年)『登記官からみた相続登記のポイント』新日本法規.

です。

題名のとおり、著者は元登記官の方であり、また「登記官からみた」シリーズは、これ以外に何冊かあります。
なお、上記のような事案については、144頁以下に書かれており、
①被相続人とその地位を包括的に承継する各共同相続人の全員はイコールの法的立場にあると観念できること
②遺産分割協議の本質は各共同相続人間の相続持分の交換類似の処分行為と考えれば、遺言の効力が発生し、権利を取得した相続人と他の相続人との間で、権利を交換等したと考えることもできること
を理由として、
「相続させる」旨の遺言があったとしても、相続の登記が未了であれば、遺産分割協議により直ちに遺言と異なる内容の相続の登記をすることができる
としています。

つまり、私の法務局への事前相談に対する回答とは、結論を異にするものです。

うーん、悩ましいです。

 

 

 

さて、次回は、渉外不動産取引(おそらく何回かに分けます)か遺産分割協議書(遺産分割協議後その相続人がさらに死亡した場合)について書きたいと思います。

 

次(渉外取引①(非居住者に住宅用家屋証明書による減税の適用はあるか又、添付書類は何か)