ブログ

四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について

前(親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策)

平成29年4月下旬頃、大阪市内の不動産(マンション一室)の売却に係る登記案件を受任しました。

この取引は、いわゆる三ため契約(第三者のためにする特約)により、甲から丁(売買契約は、甲乙間、乙丙間、丙丁間の3つ必要です)に直接所有権を移転(登記の動きも同様)したいとするものでした。

問題は、三者間新中間省略登記の場合は、売買契約の特約及び登記原因証明情報などの書式が広く出回っているのですが、これが四者間新中間省略登記となると、なかなかそれらの書式が見当たらないことでした(もっとも、基本的には、三者間と同じなのですが)。

そこで、三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における特約及び登記原因証明情報等をベースにして、四者間新中間省略登記バージョンを作成し、管轄法務局に対する事前の相談票による確認をし、それをもって、実際の登記手続き等を進めることにしました。

 

ではまず、ベースになる三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における契約書に加える特約及び登記原因証明情報等について確認します。

【前提】

・売買契約書自体は、第一の契約:甲乙間、第二の契約:乙丙間の2つ必要です。

(買主の地位譲渡なら1つです。但し、買主の地位が移るので、丙に売買代金が知れることになります。また、地位譲渡の対価は不動産所有権ではなく、包括的な意味での買主の地位ですので、対価全体(土地・建物の区別なく)について消費税が課される可能性があります。)

・第一の契約の買主である乙が自ら所有権を取得せず、第三者(=丙)を指定して、この第三者が受益の意思表示

をし、甲から直接丙に所有権を移します。繰り返しますが、所有権は、甲から一時的にでも乙には移らず、直接丙

に移転します。よって、所有権移転登記の当事者も権利者:丙、義務者:甲となります。

・効果として、乙につき、不動産取得税や登録免許税などの不動産流通税が課されません(乙は一時的にでも所有権を取得していないから)。

⇔決して、中間省略登記が再びできるようになったわけではないです(判決による登記(不動産登記法63条)など一部を除き)。

新中間省略登記と呼ばれることが多いのは、効果がかっての中間省略登記と同じで、理解されやすいためだと思います。

【特約】

第一の契約:甲乙間

①第三者のためにする契約

②所有権留保

③受益の意思表示の受領委託

④買主の移転債務の履行の引受け

第二の特約:乙丙間

①第三者弁済

〈具体的文言〉

新中間省略登記(三者間の場合特約) ※Wordです。

 

【登記原因証明情報】

登記原因証明情報(所有権移転、新中間省略登記(三者間型)) ※Wordです。

※甲、乙、丙の連名にするか、それぞれ作成するかは、別にして、甲だけでなくそれぞれの記名押印をもらう方が無難と思います(登記研究708号141頁以下参照:真正担保のため及び乙は登記義務者に準ずるから)。

 

【その他書面】

記名押印者とその他書面

甲:所有権直接移転証書、受益の意思表示受領委任状

乙:所有権移転先指定書

丙:所有権取得意思確認書

割愛!

 

以上が、三者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)の場合における契約書に加える特約及び登記原因証明情報等です。

 

では、四者間新中間省略登記バージョンについて、考えたい思います。

まず、甲乙丙丁の関係性ですが、それぞれ別の法人や個人であり、互いに関連会社であるなどの事情はないです。

つまり、差益が知られてもよいわけではないとのことでした。

そこで、冒頭に記載のとおり、甲乙間、乙丙間、丙丁間でそれぞれ契約書(第三者のためにする特約付)を作成するという業者の方の方針で良いと思いました。

(地位譲渡なら契約書は1つですが、買主の地位が移るので、買主の地位を得た者に売買代金が知れる(=差益が知られる)ことになります。)

 

【特約】

三者間の場合との差異は、結局のところ、乙が指定した丙が自ら受益の意思表示をせず、さらに丁を指定し、丁が受益の意思表示をすることにあります。

ですから、その内容を特約に加えます。

〈具体的文言〉

新中間省略登記(四者間の場合特約) ※Wordです。

 

【登記原因証明情報】

これに対応する登記原因証明情報です。

登記原因証明情報(所有権移転、新中間省略登記(四者間型)) ※Wordです。

 

ということで、これらを念のため、管轄法務局に確認してもらい、特に問題ないとの回答でしたので、最初の甲乙

間決済(異時決済)に望み、この決済から約半月後の日付で丁名義への移転登記がうたれた謄本を後日受け取りま

した。

なお、このような新中間省略登記に興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

責任をもって対応させてもらいます。

 

 

※なお、四者間新中間省略登記については、登記情報633号50頁にも掲載されているらしいです。

 

 

最後に、本日紹介する本は、

福田龍介(2010年)『新・中間省略登記が図解でわかる本』住宅新報社.

です。

題名のとおり、新中間省略登記について書かれた本です。

分かりやすく書かれており、当初ほとんど知識のなかった私ですら、今では、上記のとおり、無事、新中間省略登

記の実務をこなすことができております。

また、書式も場合ごとに掲載されており、実務にとても役立つ書籍であると思います。

(割愛した上記書式も載ってます!!)

本当にお世話になっております。ありがとうございます。

 

さて、次回は、遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議についてか、渉外不動産取引について書きたいと思います。

 

次(遺言(遺産分割方法の指定)に反する遺産分割協議について)

 

 

 

 

親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策

前(合筆・合併後の抵当権抹消の登記識別情報について)

平成29年春頃、大阪府内のマンション1室の購入(現金で購入)に係る登記案件を受任しました。

取引の内容や登記情報の記載、その他必要書類について、特に変わったところはありませんでした。

そして、決済日当日に通常通り立会いをし、お金のやり取りも無事何事もなく終わりました。

直後、買主の方と立ち話にて、お若い方でしたので、現金で購入されたことについて、何気なく伺ってみました。

すると、親より資金援助を受けて購入したとのことでした。

そのため、可能性として税務署から不動産購入資金の出所について、後日「お尋ね」(「お買いになった資産の買

入価格などについてのお尋ね」という質問用紙)が来ることもある旨をお伝えし、一旦別れ、法務局に向かいまし

た。

 

この税務署からの「お尋ね」は、

①過去に所得税を脱税した資金で不動産を購入したのではないか

②不動産の購入に際して親族等から資金援助を受けていないか

(つまり、贈与税が課されることが考えられるが、その贈与税の申告が漏れていないか)

を確認するためのようです。

 

では、①は論外として、②は(上記事案のように)当然あり得るわけですがどのような贈与税対策が取り得るので

しょうか。

一般に、

A、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の特例をつかう。

・・・平成27年1月1日から平成33年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(=住宅取得等資金)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となる制度です。

B、相続時精算課税をつかう。

・・・原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

C、金銭消費貸借契約を結ぶ

・・・簡単に言うと購入資金の援助をしてくれた人との間で、貸金契約を結ぶということです。つまり、購入資金を贈与してもらったのではなく、いずれ返済することとするのです。もちろん、その証拠として金銭消費貸借契約書(借用書)を作成します。内容も、返済期間や毎回の返済額などについて不自然でないように作成する必要があります。

が考えられるようです。

 

なお上記の事例の顛末は伏せますが、司法書士としてすべき最低限かつ最大限の情報提供はできたのかなと思います。

※注意:具体的事案である税務(相談・手続き)については、依頼者の意向を踏まえ、税理士の先生を紹介するなどしています。

 

最後に、本日紹介する本は、
吉澤大(2014年)『〈2時間で丸わかり〉不動産の税金の基本を学ぶ』かんき出版.
です。

なお上記の「お尋ね」や各制度等については、80頁以下、246頁以下に記載されています。

この本は、不動産に関する各場面ごとに課されうる税金(国税以外も含め)や各種税制度について、平易に書かれているものです。

不動産に関する税について、勉強するにはよい入門書ではないかと思います。

思うに、自分にとって門外漢な分野の本は、最初はやはり入門書的な本を努めて買うべきです。

いきなり専門書ですと、通読すら辛くなりますから(最初に買った本を結局最後に読むことがたまにあります)。

次回は、四者間新中間省略登記のはなしか、遺言(遺産分割方法の指定)について書きたいと思います。

→次(四者間新中間省略登記(第三者のためにする特約)について)

 

 

 

合筆・合併後の抵当権抹消の登記識別情報について

平成29年3月頃、大阪市内の土地取引に係る登記案件を受任しました。
内容としては、根抵当権抹消及び所有権移転でありごく普通のものでしたが、登記情報を確認してみると表題部に平成29年2月某日付合筆、同日付分筆の記載がありました。
図解すると以下の通りです。

100-3
102-2
↓   ☜平成29年2月某日第〇〇〇〇号 合筆
100-3
↓   ☜平成29年2月某日第〇〇〇〇号 分筆
100-3
100-14

さて、この場合1件目(根抵当権抹消)、2件目(所有権移転)の登記申請に提供するべき登記識別情報は何になるのでしょうか。

普通に考えれば、
1件目(根抵当権抹消)は、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」の登記識別情報
2件目(所有権移転)は、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」または、合筆後発行の「100-3」
となると思いました。

ただ、念のため、いろいろ調べてみると、1件目について面白い先例がありました。
即ち、「平19.10.15民二2205」です。
これによれば、「・・・提供すべき登記識別情報は、合筆の登記又は合併の登記後の存する土地又は建物の登記記録に記録されている担保権の登記名義人についての登記識別情報で足りる。」としています。

これを上記に当てはめれば、合筆前発行の「100-3」の登記識別情報のみを提供すれば足ることになるようです。
理由は、合筆等の段階で、各物件の担保権の内容が完全に同一であることが、確認されているからでしょうか?

もっとも、多くは金融機関が登記義務者であり、登記識別情報等の保管はしっかりしているはずで、合筆前のすべての登記識別情報通知を預かれるため、実務的にはあまり問題にならないのかなと思います。
実際、この案件でも当然のように、合筆前発行の「100-3」及び「102-2」を預かれました。

最後に、本日紹介する本は、
青山修(平成29年)『抹消登記申請MEMO』新日本法規.
です。

なお上記の先例は98頁に掲載されています。
この本は、タイトルに「抹消登記」とありますので、抵当権や根抵当権の抹消登記について書かれたものかと思いきや、所有権の抹消登記、仮登記抹消、用益権の抹消や表題登記の抹消なども解説しています。
このサイズの本(厚さ含め)は、持ち運びが楽で電車内でも気軽に読めるので、個人的に好きです。

次回は、四者間新中間省略登記のはなしか、直接登記とは関係のないことを載せたいと思います。

次(親族等から資金の援助を受けて不動産を購入した場合の贈与税対策)